3月16日
三月十三日。
今日のメアリーは、ちょっと焦っていた。
「ふ、ふとった……!?」
そう、体重である。
なんとはなしに体重計に乗ってみれば、以前よりずっと体重が増えていたのだ。
……とはいえ、たかが二キロである。
幼児期の二キロなど取るに足らない問題であり、寧ろ下手に減量する方が不健康とも言えよう。
「ど、どうしよぉ……っ!」
しかし、乙女にとっては由々しき事態。
二キロの重みは、今まで住んでいた世界を滅ぼし得るのだ。
自然、メアリーの焦りも高まる。
「……気付いてしまったようね、メアリーちゃん」
「ゆめみせんせーっ!?」
そんな彼女を導くのは、この場合においては町田青年ではない。
彼女の人生の先達である、夢見であった。
夢見は重い事態を飲み込みながら、しっかりと語る。
「いい? ウチは先輩っていう、とっても美味しいゴハンを作る人がいるの。そんな人のゴハンをお腹いっぱい食べたら……」
「……ふ、ふとる!?」
「えぇ、そうよ。太るわ」
「そ、そんな……!?」
ショックに打ちひしがれるメアリーだったが、さりとて町田青年のご飯を食べない訳にはいかない。
なぜなら、美味しいからだ。しかし食べれば太る。
あり得ざる二律背反に、メアリーの心が音を立てて崩れようとした時。
「……でも、解決方法はあるわ!」
「!?」
「運動をするの! 食べた分だけねっ!」
「おぉ……!」
夢見は、救いの手を差し伸べた。
ジャージを着た夢見は、メアリーにも外用のダウンを着せて、手を引く。
「……さぁ、お店は先輩に任せて、運動に出かけるわよ!」
「うんっ!!」
「「いってきまーす!!」」
勢い良く飛び出た二人は、最寄りの公園へ向かうだろう。
それを見送りながら、町田青年は。
「……今日は、ヘルシーレシピにしておきましょうか」
と、夕の献立を考えるのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは いっぱい うんどうを したよ!!
ふとっちゃったから! ふとっちゃったからね!
いっぱい うんどうを したら たぶんやせるって ゆめみせんせーが いってた!
だから あしたからも うんどうするよ!
でも うんどうしたら おなかへっちゃうな。
おじちゃんが いっぱい おいしいの つくってくれると うれしいな。
あしたもいいこと ありますように!




