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3月11日


 三月十一日。

 喫茶“MARY”には、ゆったりとした時間が流れていた。


「……暇ねぇ」

「暇ですか」

「ひまー」


 “MARY”には、いつも誰かしらお客がいる。

 ありがたい事に、それぞれ違った時間に来るリピーターがいるからだ。


 しかし今日は、人っ子一人いない。

 たまたま都合が合わなかったのか、それとも薄暗い曇天が外出を躊躇わせたのか。

 六天縁はいつもの時間に来たものの、彼が去った昼下がりからは、誰も来ていなかった。


「珍しいですよね、お客さんがだーれもいないって」

「たまには、こういう日もあるでしょう」

「ひーまー」


 町田青年は黙々とぬいぐるみ作りに励んでいるが、夢見とメアリーは手持無沙汰だ。

 乱読家の町田青年につられてか、町田家の面々は皆、読書量が多い。

 故に、自分用に買って来た本達はとうに読み終えていた。

 自分用以外の物は町田青年の物が多く、読み応えはあるが難解である。


「……あ、じゃぁ、針と糸貸してください。後、いらない布」

「構いませんが、どうするんです」

「雑巾作ります。暇ですから」

「なるほど」


 夢見の要求に、町田青年は手早く応える。

 必要な物を誂える為、傷んで使えなくなった古タオルを二階から取ってくると。


「めーちゃんもやるっ!」

「えー。針使うから危ないよー?」

「やるーっ!」


 暇に煽られたのだろう。

 メアリーが縫い針に手を伸ばしていた。

 流石に危ないのは分かっているので、夢見も彼女の手が届かない場所へ縫い針を置く。

 その様を見て、町田青年は苦笑を浮かべながら。


「……子供用がありますが」

「お願いしまーす!」

「しまーす!」

「はい」


 再び、二階へ上がるのだった。




 ■メアリーの にっき■


 きょうは ぞーきんを つくったよ!

 ぞーきんは ふきふきできる いらないぬので つくります!

 めーちゃんは にまい つくったよ!


 でもでも ゆめみせんせーは じゅーまいも つくったんだ!

 ゆめみせんせーも おさいほー じょうずなんだね!

 すごい!


 わたしも いっぱい おさいほー できるように なりたいな。

 それで いっぱい ぬいぐるみさん つくるんだ!


 あしたもいいこと ありますように!


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