3月8日
三月八日。
今日はメアリーが寝静まった後、町田青年と夢見が話し合っていた。
「……流石に、あの丈のメイド服は売ってないですよ」
「ですよね……」
そう、メイド服についてである。
流石にネットで探しても、幼児向けメイド服は中々見つからなかったのだ。
量販店でも見つからず、後に残された選択肢は諦めるか……。
「……夢見さん」
「なんですか、先輩」
「洋裁のご経験は」
「あるにはありますけど、エプロンドレスとか無理です」
「ですよね……」
……自分達で作るのみであった。
とはいえ、流石に二人共、メイド服を作った事などなく、力なく肩を落とす。
「誰か作ってくれる人、探します?」
「いるんでしょうか」
「分かりませんよ。探さないと」
「そうですよね……」
ううん、と悩んだ末。
二人は結論付けた。
「取り敢えず、オーダーメイド出来るところを探してみましょう」
「ですね。予算って大丈夫です?」
「家賃や光熱費、仕入れ費用と水道代、それと貯金……全て差っ引いても余裕はあるかと」
「分かりました。じゃぁ、そういうことで」
「はい」
力強く頷く二人は、別にメアリーの望みを叶えたいだけではない。
彼らもまた、メアリーのメイド服姿を、一目見てみたかったのであった。
大人たちの善意の暗躍は、幼女の想像を余所に広がっていった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃんが むずかしそーな おかおしてたよ。
おじちゃんが めーちゃんには ナイショのおはなししたら ゆめみせんせーも むずかしそーな おかおしてた。
なんの おはなし してたんだろう?
もしかして めーちゃん なんかわるいこと したかな。
あした ごめんなさいって いったほうが いいかな。
もし めーちゃんを すてるおはなしだったら やだな。
あしたもいいこと ありますように。




