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3月6日


 三月六日。

 今日は、町田青年がちょっと寝ぼけていた。


「…………」


 もう脅かされない、という安心感があったのだろうか。

 町田青年は、朝からゆるゆると力を抜いていたのである。

 普段の眼差しとは違い、どこか腑抜けた感じのその顔を、メアリーはペチペチと叩く。


「……おじちゃーん?」

「……はい」

「おきてるー?」

「……はい」


 どこか力ない返事に、メアリーは首を傾げる。

 そうして、彼女がぎゅーっと抱きしめると、漸く町田青年は目を瞬かせた。


「……メアリーさん?」

「ぎゅーってして!」

「はい?」

「ぎゅーって! してっ!」

「はい」


 言われるがままに抱き寄せると、メアリーは胸元にすりすりと顔を埋める。

 そうして、徐ろに見上げると。


「げんき!」

「はい」

「めーちゃんのげんき、あげるねっ!」

「……はい」


 にっこりと、笑うのであった。

 その眩しさに、町田青年は目を細め、気を引き締める。

 この幼女にいつまでも元気にいてもらうには、腑抜けてはいられないのだ。


「元気になりました」

「よかったー!」

「はい」


 そうして、町田青年はもう少しだけ元気を貰う為に、彼女の頭にそっと頬ずりする。

 柔らかな金糸が頬を撫でる心地良さに、町田青年の不安も虚脱も、根こそぎ溶けていくのであった。


 ■メアリーのにっき■


 きょうは おじちゃんが ふわふわしてたよ!

 なんだか げんきない ふわふわ! あんまり よくないなー。


 だからね めーちゃんね おげんきになるように ぎゅーってしてあげたの!

 ぎゅーってすると げんきになるからね!

 おじちゃんも とーっても げんきになったよ!


 おしごと いっつも ちゃんとして おじちゃんはえらいね!

 あしたもいいこと ありますように!


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