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3月3日


 三月三日。

 今日は定休日なので、ちょっとだけ、若者らしい所に来ていた。


「……おぉー!」

「若者らしい、でゲーセンってどうなんでしょ?」

「充分かと」


 そう、ゲームセンターである。

 数が少なくなって久しい施設だが、東京にはまだまだ数がある。

 今日はその中でも、最寄りのゲームセンターに来ていた。


「なにこれ! なにこれすごい!」

「今日はここで遊び尽くしちゃうよー?」

「おーっ!」


 いつも以上に目を輝かせるメアリーに、町田青年も夢見もにっこりと笑う。

 あれは何、これは何と聞く彼女は、町田青年も久方ぶりに見る物だった。

 それに丁寧に答え、時に遊ぶ内に……メアリーは一つの遊具に目をつける。


「ね、ね。これはー?」

「これは、UFOキャッチャーですね」

「ゆーふぉー?」

「未確認飛行物体です。アレを動かして、中のモノを取り出す遊びです」

「そっかー!」


 UFOキャッチャー。

 アクリルケースの中に、フィギュアやお菓子、ぬいぐるみなどが入ったそれらは、さぞメアリーの目に可笑しく映ったことだろう。

 そんな中で、メアリーはUFOキャッチャーの中で佇む、うさぎのぬいぐるみに注目した。


「……うさぎさん!」

「欲しいですか」

「ほしい!」

「成程。夢見さん」

「はいはい。じゃぁ両替頼みマース」

「はい」


 目を輝かせるメアリーの為に、夢見は指を鳴らす。

 こういった遊びは、町田青年よりも夢見の方が得意なのだ。

 ちなみに町田青年がやった場合、全財産を投じても成し遂げられないだろう。


「まぁまず、最初は譲ってあげる。レバーとボタンを動かして、UFOのツメでひっかけるの。わかった?」

「うんっ!」


 夢見が百円を何枚か投じると、機械はけたたましい電子音を立てて動き出す。

 メアリーは町田青年に抱っこされながら、レバーとボタンを動かす。

 動きを止め、ゆっくりと降りるUFOを、ハラハラ・ドキドキと三人で見守っていたが……。


「……あー!?」

「あらら、落ちちゃった」

「惜しいです」


 ぬいぐるみの重さに耐えかねたUFOが、ぬいぐるみを落としてしまった。

 ちょっとだけ近づいたものの、依然穴までの距離は遠い。

 悔しげに唸るメアリーを撫でながら、にやり、と夢見は笑った。


「じゃぁ、次は私の番。いい、メアリーちゃん。UFOキャッチャーってのは、いかに上手く引っ掛けるかの勝負で……」


 そう言いながら、彼女はレバーとボタンを繰る。

 UFOは夢見の思うがままに動くと、ゆっくりとぬいぐるみの足の間を掴み……上まで、無事に持ち上がった。


「……おー!」

「持ち上がりましたね」

「まぁ、ここから次第だけど……大丈夫そうね」


 ハラハラと見守るメアリーと町田青年を見ながら、夢見はほくそ笑む。

 移動の際、少しだけUFOのツメはぐらついたが、何とか穴の下までぬいぐるみを運んでみせた。


「……うさぎさんきた!」

「おぉ」

「ふふん。メアリーちゃん、何か言うことはあるかな?」

「ゆめみせんせーすごぉーい!!」

「そうでしょう。そうでしょう」


 そうして落ちてきたぬいぐるみを抱えながら、メアリーは素直に夢見を賞賛する。

 町田青年もそれに追従し、拍手を以て夢見を讃える。

 得意げな表情を浮かべる夢見は、その豊かな胸を大きく突き出すのであった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは ゲームセンターに いったよ!

 ゲームセンターは いろんな あそびが いっぱい!

 ホッケーゲームとか UFOキャッチャーとか! いろいろあるよ!


 UFOキャッチャーはね とってもむずかしいの!

 でもね ゆめみせんせーは いっかいで うさぎさんをとっちゃったんだよ!

 ゆめみせんせーは ホントに すごい!


 でも おじちゃんは そんなゆめみせんせーを ゲットできちゃうから

 ゆめみせんせーは おじちゃんの つぎくらいに すごいんだね。


 ゆめみせんせー うさぎさん ありがとう!

 あしたもいいこと ありますように!


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