3月2日
三月二日。
今日は、布団を干していた。
単に、何となく。日差しが良かったからだ。
「……ぽかぽかしてる!」
「ちょうど良い時間に出したもんねぇ」
ベランダに二人分の布団を並べて、メアリーと夢見は口々に言う。
普段は川の字で寝ている為、メアリーの布団はない。
しかしこの幼女はしょっちゅう、町田青年か夢見のどちらかに引っ付いている為、当分はいらないだろう、というのが夢見の所感であった。
「ぽかぽかー!」
「まだ肌寒いけど、結構温かくなるもんねぇ」
陽の光を浴びて温かくなった布団に、メアリーが抱きつく。
彼女は頬ずりをすれば、布団はお日様の匂いを返してくれる。
……ダニの死骸の匂いなどというのは、無粋だろう。
そう考えながら、夢見は布団たたきを手渡した。
「はい、メアリーちゃん」
「んぅ?」
「これで布団を叩いて、ホコリを取るの。ぱん、ぱん、ぱんって」
「はぁーい!」
言われるがままに、メアリーが勢い良く布団を叩く。
ぺし、ぺし、ぺし。
幼女の力で振るわれるそれは、乾いた音を立てていた。
「ぱん、ぱん、ぱぁーんっ!」
「はい、もういいわよー」
「ふーっ! ……いいしごとしました!」
「良い仕事でしたねー。流石メアリーさんです」
「えへへー」
褒められて照れるのは、素直な証拠だ。
そんな素直なメアリーに微笑みながら、夢見は布団と、洗濯物を取り込む。
ワクワクした表情のメアリーを見て、夢見はいたずらっぽく笑うと。
「ほら、飛び込めー」
「わぁーい!」
彼女の為に、布団を敷いてあげた。
すぐさま飛び込んだメアリーは転げまわって、布団の温かみを享受する。
「ぽかぽか! ぽかぽかー!」
「ほーれ、もふもふも追加しちゃうぞー」
「もふもふだぁー!」
ついでに毛布も被せてやれば、メアリーの興奮は最高潮に達する。
しばらくころころと転がると……。
「……すぅ」
「相変わらず、早いなぁ」
……穏やかな寝息を立てて、メアリーは眠ってしまった。
そんな彼女に布団をかけ、夢見はその横に寝そべる。
「ちょっとお昼寝しようね」
「んぅ……」
静かに、鈴を転がす様な声で。
夢見はメアリーの為に、子守唄を歌ってやるのだった。
■メアリーの にっき■
きょうは おふとんを ほしたよ!
おふとんは ほすと ぽかぽか!
おひさまのニオイが ふわふわするの!
それでね もふもふの もうふを もふもふすると ふわふわで ぽかぽかで ふわぁーってなるの!
ねむくなっちゃうけど しあわせなかんじ!
ゆめみせんせーと いっしょだと ぽかぽかで きもちいいけど
おじちゃんとも いっしょに おひるねしたいな!
あしたもいいこと ありますように!




