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2月29日


 二月二十九日。

 今日のメアリーは、こそこそと本を読んでいた。


「おぉー……!」

「……何を読んでいるのかね、彼女は」

「夢見さんの、本かと」

「あぁ、あの従業員君の……」


 町田青年や六天縁の目線も気にせず、彼女は黙々と読み続けていた。

 紙のカバーがつけられたそれは、もう六冊目である。

 しげしげと、町田青年が覗き込むと……。


「……漫画ですか」

「うん! まんが!」

「ほう。そりゃ六冊も読める訳だ」


 ……そこには、流麗な男性と、元気な女の子の恋愛模様が描かれていた。

 厳しくも華々しい人生を歩む二人が、笑い合っている光景を、大人のおじさんが二人揃って眺めている。


「……何だか、コッテコテの青春だねぇ」

「そう見えますか?」

「うむ。まぁ、良いのではないかね。趣味は趣味だ」

「はい」


 六天縁が興味を失っても、メアリーは熱心に読み続けている。

 やがて一冊を読み終わると、「あのねー」と切り出した。


「このおにーさんねー」

「はい」

「おじちゃんに、にてるからねー」

「……はい?」

「すっごく、おもしろかったなーって!」

「はい……」


 言われてみれば、登場人物の男性は線が細く、寡黙で、気の優しい男である。

 自分はそうだとは露とも思ってはいないが、町田青年に似ているかと聞かれれば……。


「ほう、成程確かに」

「にてるでしょー?」

「似てるなぁ。こりゃ面白い」


 ……言われてみれば、似てる。というのが客観的な意見であった。

 町田青年は、少し考えこんだ後。


「……メアリーさん」

「なーに?」

「夢見さんが帰ってくる前に、元の場所にお片づけしましょうね」

「はーい!」


 そっと、メアリーに片付けを促すのだった。

 その日、夢見は何も気付かずに、晩ご飯を美味しく頂いたという。



 ■メアリーの にっき■


 きょうは まんがを よんでたよ!

 まんがは えが たくさん!

 おもしろいね! もっと よみたい!


 でも ゆめみせんせーに よんだって わかっちゃったら ダメなんだって。

 「はずかしいから」らしいよ。 なんでだろーね?


 めーちゃんもっと まんが よんでみたいな!

 あした ゆめみせんせーに おねだりしよっかな!


 あしたもいいこと ありますように!


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