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2月24日

 二月二十四日。

 町田青年は、包丁を磨いていた。


「……ふむ」


 ステンレス製ではなく、鉄包丁である。

 蚤の市で買った安物だが、大学を去ってから数年、長らく町田青年の料理を作り続けて来た逸品だ。

 勿論、メアリーには子供用のプラスチック包丁しか触らせていない。

 町田青年だけの、鉄包丁であった。


「砥石、まだ大丈夫かな」

「といし?」

「モ○ハンでもやるんですか?」

「いえ、少し包丁を砥ごうかと」

「ほほう、砥ぎか」


 メアリーのみならず、夢見や六天縁までもが興味深げに覗き込む。

 町田青年の砥石は薄く、平たくなっており、真ん中になるにつれ凹んでいる。

 長年使い続けた証であり、この凹みに、町田青年は親しみを憶えていた。


「随分使い込んでるなァ。店主は、こういう古風なモノが好みかね」

「はい。勿論、SFも好きですが」

「ははは。そりゃありがたい」


 水を垂らし、包丁を滑らせる。

 しゃーこ、しゃーこという音が響き、コーヒーミルとは違った趣の楽しみを提供していた。


「……めーちゃんもやってみたい!」

「ダメです」

「えーっ!?」

「危ないので、見ていてください」


 そうメアリーに言い含めると、渋々彼女は了承する。

 本当は一から十まで、自分一人の手でやりたいから、というのもあるけれど。

 それは敢えて話さない町田青年であった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは おじちゃんが ほうちょうを とぎとぎ してたよ!

 めーちゃんが さわれない てつぼーちょー。

 さわりたーいって いうんだけど だめーって いわれちゃうの。

 いつか さわってみたいな。 でも あぶないのかなぁ。


 とぎとぎしてる おじちゃんは なんだかとっても たのしそう。

 おじちゃんは しゅうちゅうする てさぎょーが だいすきだもんね。

 めーちゃん ちゃーんと しってます。


 いつか おじちゃんみたいに いろんなおどうぐで おりょーりしたいな。

 あしたもいいこと ありますように!


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