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2月22日


 二月二十二日。

 昨日頼んだテレビは、何の滞りもなく今日届いた。


「これで、見れると思います」

「……おぉー……!」


 テレビとその周辺機器の設置を終え、町田青年はそう呟く。

 我が家にテレビがやって来た事実に、メアリーは感動の声を上げた。


「ね、ね。みていい? みていい?」

「いいわよー。じゃぁ、電源を押してー」

「はーい!」


 町田青年に抱き上げられながら、彼女の背にはちょっと高い位置にある電源ボタンを押す。

 かちかち、ぶん、と音が鳴ると、液晶テレビはその画面に、番組を映し出した。

 丁度バラエティ番組をやっていたのか、けたたましい笑い声が部屋に響く。


「……おー!」

「はい、メアリーちゃん。リモコンどーぞ」

「りもこん?」

「それを使えば、チャンネルを切り替えられます。別な番組が見たくなったら、使ってください」

「わかったっ! えっとー……」


 メアリーはリモコンを両手に持ちながら、新聞の番組表を見つめる。

 時計を見合わせ、幾つか分からない漢字を教えて貰いながら、彼女は目標を定めた。

 

「……えいっ!」


 瞬く間にチャンネルが切り替わり、バラエティ番組の笑い声が止む。

 次いで、メアリーの指示通り、テレビが流し始めたのは……。


『――さん! カクさん! やっておしまいなさい!』

『『はっ!』』


 ……国民的に有名な、時代劇ドラマであった。

 良い身なりの老人に命じられた偉丈夫二人が、瞬く間に悪党の手下を蹴散らしていく。


『この紋所が、目に入らぬか!』

『『は、ははーっ!』』


 偉丈夫が突き出した薬入れを――正確にはそこに描かれた紋所を――見て、悪党達が一斉にひれ伏す。

 そんな古き良き、伝統的ドラマを観て、メアリーは。


「……かっこいい!」

「「えっ」」


 目をキラキラと輝かせて、興奮気味に捲し立てた。

 予想外の反応に、町田青年も、夢見も呆気に取られる。


「すっごくかっこいい! このおじいちゃんたち、かっこいー!」

「えぇ、と……先輩?」

「……時代劇はセーフ、でしょうか……?」

「ううん……?」


 確かにこの番組は良い物だ。

 勧善懲悪が整っているし、内容も毎週似たような物だから、悪い意味で予想外の展開もないだろう。

 ……しかし、小さな女の子が観るものだろうか?

 そこまでは、大人二人にも判断がつかないことであった。


「ね、ね。これ、いっつもやってる?」

「えぇと、再放送ですから……」

「……毎週やってるっぽいよ? 同じ時間帯に」

「みるっ!」


 しかし、目を星の如く瞬くメアリーに負けて。

 二人の中で、『時代劇はセーフ』という基準が出来上がるのであった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは テレビが きたよ!

 テレビは いろんな ばんぐみを みせてくれる すごいこ!

 いろんなものが みれて おもしろい!


 でも めーちゃんが いちばんすきなのは じだいげき!

 めーちゃん おじーちゃんみたいに にこにこして いいおじいちゃんに なるんだ!


 ……でも おじーちゃんって どうなるんだろ?

 なっていいのかな? よくわかんない!


 でも もんどころは ほしいかも! らいしゅう たのしみだね!

 あしたもいいこと ありますように!


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