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2月21日


 二月二十一日。

 今日は夢見とメアリーの二人で、電気屋に来ていた。


「……おっきいの、いっぱい!」

「まぁ、ヨ○バシだしねー」


 そう、二人でである。

 負け犬は喫茶店に置き去り。今日は女の子二人でのお買い物であった。

 チラシを片手に、二人はキョロキョロと辺りを見回す。


「今日はテレビを買います!」

「テレビ!」

「そう! なるだけ安くて、丈夫で、長持ちするヤツを!」

「じょうぶなの!」


 無論、論戦に勝ったからとて、下手な物を買う訳にはいかない。

 予算は無限では無いのだから、なるべく安く、なるべく頑丈な物を購入するのが一番だ。

 しかし……。


「……でも、どーやってみつけるの?」

「う……」


 ……家電のプロでもないのに、それを調べるのは困難だ。

 思わぬつまずきに、夢見も口を噤む。

 だが、夢見も伊達に二十数年を生きてきた訳ではない。


「……わ、分からなかったら人に聞けばいいのよ!」

「おー!」

「そうと決まれば……あの、すいませーん!」


 すぐに最適解を弾き出すと、早速店員に話を聞く。

 流石に本職の人間だけあって、その店員の案内は淀みなく、しかも分かりやすいものだった為、すぐに候補を二つまで絞ることが出来た。

 ただ……。


「……うーん、どっちにするか、が悩みドコロよね」

「どっち?」

「そう。こっちと、そっち。どっちにするか」

「うーん……」


 ……二つから一つに絞るのは、難しいことだ。

 片や映像美に重きを置いた、安くて頑丈なテレビ。

 片や音声美に重きを置いた、安くて頑丈なテレビ。

 どちらも前提となる条件は満たしている。問題は目で楽しむことを優先するか、耳で楽しむことを優先するか、くらいだ。

 だからこそ、尚の事悩ましい問題であった。


「メアリーちゃんは、どっちにしたい?」

「えっとねー……」


 メアリーは悩んだ末、小さな指をテレビ二台へと向ける。


「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」

「て、適当……!」

「て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!」


 指が止まったのは、音声美に重きを置くテレビ。

 余りにも適当な決め方ではあるが、取り敢えず夢見も納得する。

 どうせ自分で考えれば二時間・三時間はかかった上で、買った後も思い悩むのだ。

 そのくらいなら、曲がりなりにもメアリーの意思で決めた物が良いだろうというのが、彼女の結論だ。


「じゃぁ、こっちにしようか」

「うんっ!」


 そう言って、夢見は購入手続きを済ませる。

 車に載せていくと危ないので、テレビは郵送で送って貰うことにした。

 届くのは明日である。


「……楽しみだねー?」

「うんっ! ばんぐみ、たのしみ!」


 ウキウキしながら、二人は家路につく。

 楽しい楽しいテレビ番組が、明日やっていることを祈りながら。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは テレビを かってきたよ!

 おとが とってもいい テレビなんだって!

 はいたつの ひとが あした とどけにきてくれるよ! たのしみだね!


 おじちゃんは ちょっと むすーって してたけど

 めーちゃんが げんきだしてーっていったら わらってくれたよ!

 おじちゃんの わらいかたは ちいさいから わかりにくいけど

 めーちゃんには わかります! めーちゃんだから!


 あしたは おみせがおわったら みんなで テレビを みるんだ!

 あしたもいいこと ありますように!


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