20◯7年4月1日
20○7年4月1日。
「おとーさん、おかーさん、はやくはやくっ!」
「はい」
「はいはーい」
未だ寒さ残る初春の頃。
通い慣れた自然公園だったが、彼はいつだって楽しそうに遊んでくれる。
それは、町田三夢にとってとても嬉しいことであった。
「おねーちゃんも、はーやーくーっ!」
「はーいっ」
そして。
「シンジくんは、いつも元気だねぇ」
「うんっ! だって、メアリーおねーちゃんといっぱいあそべるんだもんっ!」
「えへへ、嬉しいなー」
自分の息子とメアリーが、笑顔で、楽しそうに遊んでいることは、何よりも嬉しいことであった。
自分と夢見の息子は、嘗てのメアリーの様に、無邪気に遊んでくれるのだ。
「ね、おじさんっ。行ってきていーい?」
「めーちゃーん?」
「あっ……えへへ」
照れ臭そうにメアリーが笑えば、少しご機嫌ナナメのフリをした夢見も、同じ様に笑う。
その顔は幼いあの頃よりも遥かに大人びて、そして輝いていた。
「おとーさんっ、おかーさんっ、いってきます!」
「いってきまーっす!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「はい」
自分達は少し歳を感じてはいたが、まだまだ元気に振る舞わねばならない。
店だって切り盛りしなくてはならないし、何よりも、この子供達はこれからもっと元気になっていくのだから。
だからこそ。
「楽しんで、くださいね」
「……うんっ!」
今、メアリーが浮かべている笑顔は、これから先、ずっと先まで。
彼が、守るべきものなのだ。
人生という旅は続く。
波風は立ち、山も谷もあるだろうけれど、それでも続くのだから。
少しでも、たくさんの楽しみと、嬉しさを胸に、笑い合おう。
そう想いながら、彼はゆっくりと、手を振って送り出した。
4月1日ではありますが、午後なのでこれが真の完結となります。
長らくのご愛読、本当にありがとうございました。
いつかまた、次回作でお会いしましょう。




