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12月30日
十二月三十日。
大晦日は何かと忙しくなる。
その為、買い出しに行くなら今日が一番であった。
「鰹節」
「ありまーす!」
「蒲鉾」
「あるー!」
「栗」
「あるよー!」
「お餅」
「あーる!」
沢山の買い物。沢山の食料品。後、そこそこのお酒と、ジュース。
今年のおせちはあまり美味しくなかったので、来年は豪勢にしようという、町田青年の粋な図らいであった。
「ぜんぶよーし!」
「お年賀も出しましたよね?」
「はい」
「じゃぁ、帰って御節づくりですね!」
「……はい」
おせちを作る。
何気なく初めての体験が、町田青年の心を僅かに踊らせる。
そう、初めてなのだ。レシピを携えてはいるが、初めて作る料理。
これからは、そういった体験も増えていくだろう。
「おせちー!」
「はい」
もっともっと、増えていくだろう。
増えていってほしい。
そう、町田青年は思って止まなかった。




