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11月12日
十一月十二日。
冬のお散歩は、楽しい。
「いき、しろい!」
「もう冬、ですね」
「冬ねぇ」
仕事がある日の散歩は、大抵夜、閉店してからになる。
日が暮れた後ではあるが、三人で過ごす時間は何よりも貴重な物だ。
「ゆき、ふるかな?」
「もう少し、寒くなってから、なら」
「そうねぇ、十二月には降るかもしれないわね」
「じゅうに……!」
いち、に、さん。
指折りながら、彼女は呟いて数える。
じゅう、まで数えて、結んだ手を開いて、じゅういち、じゅうに。
算数も、順調に覚えている様だ。
「あと、いっかげつ!」
「よくできました」
「えへへー!」
メアリーも、成長している。
だからこそ、前を見つめられる。
果たして、十二月の終わりに何が待っているのか。
一抹の不安を覚えながらも、この子なら大丈夫。そう己に言い聞かせる、町田青年であった。




