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11月6日
十一月六日。
今日は、珍しく町田青年が寝ぼけていた。
「……ふぁ」
「あくび!」
「あら、珍しい」
珍しくお酒を入れたせいか。
昨晩はあまり眠れず、町田青年は少しぼんやりとしていた。
それでも包丁を持つ手は危うげがないのは、日頃の鍛錬の賜物だろうか。
「おじちゃん、おじちゃん」
「はっ」
「えっ」
「なんでしょう」
「えぇっ」
メアリーが呼びかければ、驚いた様に町田青年が跳ね、メアリーがそれに驚いて跳ねる。
その後、何事もなく動き出すのだから、更にメアリーが驚く羽目になった。
「……おじちゃん、ちゃんとねよっ」
「ど、努力します」
動作が安定しないと、本当に機械か虫の様な男である。
ちゃんと眠るようにさせなければ、と、夢見はくすくすと笑うのだった。




