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10月29日
十月二十九日。
そういう訳で、編み物である。
「……おぉ、すっごい」
「店主さん、凄い勢いで編み物してる……」
メアリーから催促されれば是非もなし。
町田青年は店の切り盛りの傍ら、黙々と毛糸と棒針を操り続けていた。
「……おじちゃん、すごい!!」
「いえ、それ程では」
身体の慣れを、思い出す様に。
町田青年は少しずつペースを上げながら、簡単な物から、徐々に難しくと移り続けていた。
目標は、セーター作り。それも一週間以内である。
「……手はちゃんと洗いましょうね?」
「心得てます」
勿論、ちゃんと濡れたり汚れたりしない様に。
きちんとハンカチ(お手製)を忘れない、町田青年であった。




