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10月28日
十月二十八日。
今日は、寒波が押し寄せてきている。
「さぶ……っ!」
「厚めの物を、着てください」
「うぅ、オシャレはガマンだけど、背に腹は代えられないかぁ……」
雨と相俟って、非常に非情な寒さを与えている。
中々に辛いが、幸い冬服は新調していた。
「メアリーちゃんは大丈夫かなー?」
「マフラーあるからー!」
「大丈夫かー。よかった」
更に、メアリーは黄色いもこもこのマフラー付きである。
お手伝いの途中で汚してしまうかもしれないが、それでも愛らしく、似合っていた。
「ありがとねー、せんせー!!」
「はいはい。……じゃ、行ってきます」
「お待ちを」
早速大学へ出かけようとする夢見に、町田青年が待ったをかける。
首を傾げる彼女を他所に、彼はふわり、と彼女の首を巻いた。
緋色の、手編みマフラーであった。
「……寒いので、急遽拵えました。どうぞ」
「……あ、ありがとう、ございます……」
その顔がマフラーと同じくらい真っ赤になって。
そそくさと、夢見が頭を下げながら出かけていくと。
「……ずるーいっ!!」
メアリーはさも当然の様に、手のひらを返すのであった。




