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1月30日

きょうはゆるゆる。


 一月三十日。

 危惧していた店長の報復が取り敢えず起きなかったことに、町田青年は安堵した。


 しかし、完全に安心は出来ない。

 いつ彼が事を荒立てるかも分からないからだ。


 今の町田青年には一刻でも早く退避出来る場所が必要だった。

 あの店長の、追手から逃れる為に。


「……なので、引っ越しをしようと思うのです」

「ひっこし!」

「はい」


 珍しく携帯電話を片手に、町田青年は言う。

 携帯電話は不動産屋の情報が載っており、手頃な情報はないかと、彼は探りを続けていた。


 とはいえ、安いからと住み続けているボロアパートである。

 流石に今より安い住居というのも、中々見つからないものであった。


「……どこか、いいところがあればいいのですが」

「いいところかぁー……みなみのしま?」

「そんなに遠くないところで」

「そっかー」


 悩みつつも、二人の頭はそれほど危機感を感じていなかった。

 何せ、仕事という最大限の憂い事がなくなったのである。

 メアリーを世話することの報酬で食いつなぐのは後ろめたいが、一日くらいは寝ていても構うまい、と、少なくとも町田青年は思っていた。


「……今日は、ちょっと疲れたので」

「うん」

「寝ていたいです」

「うん! いっしょにねるー!」

「はい」


 ごろん、と布団に寝転んで、町田青年は言う。

 メアリーもそれに応じて、町田青年の懐に擦り寄った。


「ゆっくりやすもうね!」

「はい……」


 蹴られた痣が痛むが、気にすることもあるまい。

 そう思いながら、町田青年はゆっくりと目を閉じる。

 この日は何も出来なかったし、しなかった。だが、とても満ち足りた気分になった一日であった。


 ■メアリーの にっき■


 おじちゃん にっき かいてくれて ありがとね!


 きょうは いちにち ごろごろ してたよ!

 おじちゃんは あんまり あせを かかないけど めーちゃんね ちょっと あせっかきなんだ。

 おじちゃんと おねんねすると ちょっと びちょーって なるんだよ。

 だから おじちゃんと ふきふきするか おふろはいるの。

 あさは あったかぬれタオルで ふきふき! きもちいー!


 そういえば おひっこし するらしいよ。

 めーちゃんは おひっこし にかいめ。

 いっかいめは おじちゃんちで にかいめは これから!

 どんなおうちに なるのかな。 たのしみ!


 あしたもいいこと ありますように!


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