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10月18日
十月十八日。
最近のメアリーは、芸術の秋を楽しんでいる。
「できたー!」
といっても、流石に食事処で粘土の類は扱えないので、専らはお絵描きである。
色鉛筆を両手に握りしめ、ぐるぐると掻き回せば、芸術の大完成である。
「これは?」
「りんご!」
「おぉ……」
果たして林檎はオレンジ色であっただろうか。
それともこれは写実的な絵画ではなく、キュビズムめいた、独創性溢れる発想の賜物なのだろうか。
考えても答えはでない。なので。
「上手です」
「えへへー!」
精一杯、褒めることにした。
彼も大概、子煩悩であった。




