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10月14日
十月十四日。
それがいかに小さく、軽いものだとしても、使命というものは人を動かす力となる。
町田青年はその力を振り絞り、日々の仕事に打ち込みながら思索に耽っていた。
メアリーは一年間しか生きられない。
彼はその認識を飲み込むのに、五日もかかったことを後悔する。
それだけの時間を浪費しながら、彼はただ平易に過ごしてしまったのだと、己を責めた。
しかし、責めたところで、悔いたところで、町田青年には何も出来ない。
ただただ、無力感を味わいながら。
独りでは何も始まらないことを、彼は噛み締めた。




