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10月3日
十月三日。
町田青年は、押し入れにしまい込んだ貴重品袋を探っていた。
「……あった」
一月一日。
初めて出逢った日に、渡された手帳。
何気なくしまい込んだそれは、やや古ぼけてしまったが、その文字を保っていた。
「……ILO」
黒革の手帖に、金字で綴られた英単語。
恐らくは何かの略語だが、生憎と町田青年には心当たりがなかった。
しかし、メアリーの出生に関わる、大きな心当たりになり得る。
「調べる必要が、あります」
彼女の為に、そして自分の為に。
敢えて見ずにいた“真実”を暴く、その決意を、町田青年は静かに抱いた。




