9月28日
九月二十八日。
今日のメアリーは、じっとひっついて離れない。
「…………引っ付き虫遊びですか」
「んーん……」
足にひっついて離れない“引っ付き虫遊び”。
いつもの光景の様に見えたが、揚げ物の時すら離れようとしないのは、やや過剰である。
油が跳ねる可能性がある以上、ひっつかれたまま揚げ物をする訳にもいかず、町田青年はどうしたものかと、メアリーを見下ろした。
「どこにも行きませんよ」
「んーん」
「大丈夫ですよ」
「んー」
梃子でも動かないのは、昨日の今朝に起きた珍事が原因だろう。
朝起きた時からずっと、メアリーは町田青年にひっついているのだ。
「……うーん」
「んー……」
困りましたね、とも呟けず。
客達が微笑ましげに見守る中、そっと天井を見上げる町田青年であった。
■メアリーの にっき■
きょうはね めーちゃん わがまましちゃったの。
ずーっと おじちゃんに ひっついちゃった。
おじちゃん こまってたかな。
でも はなれるの やだったの。
おじちゃん ごめんなさい。
あしたは じーっと みるだけにしとこっと。
みてるだけなら だいじょぶだよね?
あしたもいいこと ありますように。




