9月15日
九月十五日。
今日の町田青年は、菜箸ではなくペンを手に取っている。
昨日の早朝に描き上げた水彩画では、物足りなくなったからだ。
「……もう少し、じっとしていてくださいね」
「「はぁーい」」
目の前で座るメアリーと夢見を見やりながら、町田青年はペンを滑らせ、スケッチを描く。
人物画は、町田青年の得意分野である。
取り分け、絵の具を使わない分だけ早く描けるので、彼にとっては現状、一番得意な美術と言えた。
「……うん」
「もういーい?」
「はい、いいですよ」
「はぁいっ」
「ふぅっ、やっぱモデルは疲れますね……」
「お疲れ様でした」
瞬く間に、とはいかないが、一時間もかからずにスケッチを終える町田青年。
そんな彼の作品を見て、メアリーはわぁっ、と声を上げた。
「きれい!」
「そうですか?」
「そうです!」
「……そうですか」
率直な感想は、シャイな町田青年の顔を赤らめるには充分である。
そんな微笑ましい様を、ぱしゃり。
「……うーん、写真は手早くて便利」
「あぁっ」
夢見は十秒もかからずに、スマートフォンで撮影するのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃんに おえかき してもらったよ!
めーちゃんと せんせーの おえかき!
おじちゃん おえかき やっぱり おじょうずね!
めーちゃん なんだか れすとらんの おえかきみたい!
でもでも せんせーの しゃめも きれーにとれてた!
めーちゃん いっぱい おじかんかかるから むずかしいのに。
おとなって すごいね!
あしたもいいこと ありますように!




