表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/326

1月25日


 一月二十五日。

 メアリーは今日も元気に、おじちゃん……町田青年をを元気にしようとしていた。


「おべんとうっ!」

「えっ」

「おべんとうを、つくる!」

「お、おう」


 うさちゃんエプロンを着ながら、メアリーは高らかに言う。

 困惑しながらも、夢見はその豊満な胸をエプロンに包み、料理本を開いた。

 

「……で、メアリーちゃんはどうしてお弁当を作りたいの?」

「おじちゃんをおげんきにしたい!」

「ほう」

「めーちゃんのおげんきなごはんをたべたら、おじちゃんがおげんきする!」

「ほうほう」


 若干危うい言い回しではあるが、メアリーの気持ちは純真そのものだ。

 いつもお世話になっている町田青年を元気にしたい。だからお弁当を作る。

 成程、感動的な話である。料理もロクに出来ない子供に弁当を作らせたらどうなるか、を考えないかぎりは。


「と言っても、メアリーちゃんに出来る料理かぁ」

「うどん!」

「うどんはお弁当には向いてないかなぁ」


 そんな感動的な話の裏側に頭を痛めつつも、夢見は料理本を手繰る。

 一口にお弁当と言っても、その種類は多岐にわたる。

 考えに考えた、豪華な食事もあれば、白米を弁当箱いっぱいに詰めてもお弁当にはなる。


「……先輩は、白米オンリーでも黙々と食べてそうだけど」

「なっとーもいれる?」

「いやぁそれはちょっと」


 さりとて、白米だけを渡す訳にはいかないのが乙女心というものである。

 見栄も張りたいし、何よりそんなモノを出すのは申し訳ない。

 簡素でもいいから、何か「これは良いお弁当だ」と思えるモノにしたかった。


「うーん、大半は冷凍食品使うとして……」

「ちっちゃいハンバーグ!」

「うんうん。後春巻きとか。で、ちょっとくらいは作ってあげたいから……」


 口に出し、指折り数えて夢見は考える。

 煮物、卵焼き。定番のおかずを頭に浮かべながら、彼女は早々に結論付けた。


「……よし!」

「よし!?」

「今日はお弁当作りの練習だ!」

「おー!?」

「また今度、作った料理をお弁当に詰めるの! がんばるぞー!」

「おーっ!」


 ……メアリーの腕では、今日中にお弁当を作るなど不可能、という結論を。

 事実、今日は一日、卵焼き作りに奔走することとなり、その失敗作であるスクランブルエッグのほぼ全てが町田青年の胃に収まることとなった。

 食べ終えた町田青年は、些か苦しそうに。


「美味しかったです……」


 とだけ答えたのだった。

 まだまだ、お弁当作りは遠いと感じる夢見であった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは おじちゃんに おべんとうを つくりたかったよ!!

 ……つくれなかったよ! だってめーちゃん おりょうり おうどんしかできないもん!


 ゆめみせんせーと たまごやきを つくろうとおもったんだ。

 でも めーちゃん むずかしくて めだまやきしか できなかった……。


 つぎは もっと もーっと がんばる!

 あしたはいいおりょうり できますように!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ