9月4日
九月四日。
喫茶“MARY”は、金土日が忙しくなることが多い。
「揚げパンのおかわり入りましたー!」
「はい」
何気に珈琲の他、料理も人気な喫茶店であるから、皿の消費量は実に多い。
しかしながら、町田青年の拘りを鑑みると、中々に厳しいものがあった。
「……よし」
なので町田青年は、“両手”を使うことにした。
左手に菜箸を持ち、右手にスポンジを持つ。
そしてそれらを、同時に動かす必殺技だ。
「揚げパン、揚がりました」
「はーい!」
左手でメアリーへ料理を渡し、右手は休まずに皿を洗い続ける。
勿論肘の使用も忘れない。
肘で物を抑える術を使いこなせば、腕は実質四本となるからだ。
「……先輩、私も手伝いますから、お行儀わるいことはしないでください」
「はい……」
だが、これは見つかれば夢見に怒られる諸刃の剣。
今日も今日とて忙しい中、頭を下げて笑われる町田青年であった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃん にとーりゅーしてたよ!
ひだりてで おりょーりして みぎてで おさらあらうの!
かっこいい! でも せんせーに おこられるの かっこわるい……。
でもでも おじちゃん りょうてききって すごいね!
めーちゃん ひだりてでしか おはし もてないなー。
せんせーは みぎてだけらしいよ ふしぎだね。
あしたもいいこと ありますように!




