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8月31日
八月三十一日。
台風が過ぎ去れば、気温が下がる。
日差しは眩しいものの、鈴虫の声が秋の訪れを感じさせた。
「……りんりんしてる!」
「鈴虫、東京にもいるのねー」
「意外と、いるところにはいるものです」
そう言いながら、町田青年はタオルケットを多めに取り出す。
まだ残暑厳しい時もあるとはいえ、急に冷えないとも限らない。
夏は確実に遠のき、秋は確実に近づいているのだから。
「もうすぐ、秋ですね」
秋が近付けば、冬もまた一歩近付く。
冬が通り越したなら……この暮らしは、どうなるのだろうか。
少し早いセンチメンタルを味わいながら、町田青年はメアリーの頭を撫でた。
■メアリーの にっき■
きょうは いいおてんき!
おふとんとか せんたくものとか いっぱいほしたよ!
ちょっと すずしめで きもちいーし とっても いいかんじ!
でもでも おじちゃん なんだか げんきないね?
どーしてだろ。げんき でてくれないかな。
あしたもいいこと ありますように。
おじちゃんが げんきになりますように!




