8月7日
八月七日。
今日は、ちょっとした工作のお時間だ。
「……なにつくってるのー?」
「ちょっと、セミ対策を」
「セミたいさく?」
「はい」
そう言いながら、町田青年は近くの百均ショップで買い集めた物を床に広げる。
園芸用の支柱とスコップ、そしてビニールテープ。
これで一体何を作るのか。メアリーは興味津々といった様子で、町田青年の隣へ腰を下ろした。
「これで」
「うん」
「セミを」
「うん」
「こうします」
「……うん?」
軽いジェスチャーを交えての説明は、あまりメアリーには通じなかった。
仕方がないので、町田青年はスコップの柄を、支柱の先に添え、ビニールテープで括り付ける。
そうして出来上がったのは、とても柄の長い、槍の如きスコップであった。
「すごい!」
「これで、セミを掬い上げます」
「すくう?」
「こう」
その槍スコップで、町田青年は床に転がるちり紙を掬い上げる。
ひょい、と掬われたそれをゴミ箱に放り込めば、処分完了だ。
「こうします」
「すごーい!」
ぱちぱちぱち、と褒め称えるメアリーに、気恥ずかしげに町田青年は微笑む。
外に立てかけておけば、夢見ならば処分出来るだろう。
これで少しでも、二人のお出かけが気楽になればいいと思う、町田青年であった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃんが セミさんのおどーぐ つくってくれたよ!
ながーい ながーい スコップ!
めーちゃんが ふたりぶんくらい ながいの!
これで とおくから セミさん ばいばいできるね!
ありがと おじちゃん! だいすき!
あしたもいいこと ありますように!




