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1月22日


 一月二十二日。

 今日、メアリーは一大決心をした。


「せんせー! ゆめみせんせー!」

「はいはい。どうしたのー?」


 夢見がやってくると、ぱたぱたとメアリーが駆けて来る。

 どう言えばいいか、どう言ったら分かってくれるか、メアリーはうんうんと悩んだ後。


「……おじちゃんをおりょーりしたい!」

「えっ」


 一大決心を発表した。

 昼の十四時。まだ穏やかな日差しのある頃の殺人予告であった。


***


「……な、成程。先輩にお料理を作ってあげたいのね?」

「そうともいう!」

「そうとしか言わないでほしかったわ……」


 やれやれ、と胸を撫で下ろす夢見だが、頭を痛める悩みは尽きない。

 調理に使う物は危険な物が多い。

 包丁やガスコンロなどの直接的な物もだが、脚立などの便利な物も、使い方によっては危険な物になる。

 子供に調理をさせるのは、存外に難しいのだ。特にそれが、預り子ともなれば尚更に。


「何があるかしら……」


 なるべく火も包丁も使わずに済む料理があるだろうか?

 考えに考え、戸棚と冷蔵庫を探り……。


「……あ、そうだ!」


 ……ぽん、と手を当てた。

 きょとんとしたメアリーに、夢見はにこりと笑って。


「じゃ、料理作ろっか?」

「うんっ!」


 小麦粉の袋を手に取った。


*** 


 仕事から帰ってきた町田青年は、美味しそうな匂いに、僅かに鼻を鳴らした。


「……成程、それで」

「うん! ふたりでつくったんだよーっ!」

「うどんだけどねー」

「ねー!」


 卓袱台の上には、簡素ながらも、うどんが三杯置かれていた。

 小ぶりのどんぶりと普通のどんぶり。どちらも美味しそうな湯気が立ち、出来たてだということが見て取れる。

 手打ちうどん。それが夢見の取った選択だった。

 これならば、麺を打つことでメアリーも満足出来るし、危険も少ない。満足している間に夢見が茹でてしまえばいいので、最善の選択であった。


「ね、ね、たべてたべてー!」

「自信作ですよ!」

「……では。いただきます」

「「いただきまーす!」」


 三人揃って手を合わせ、うどんを手繰る。

 はふ、はふと口を転がして、町田青年が一言。


「……おいしい」


 と溢し、ほんの僅かに顔を綻ばせた。

 その言葉と態度に、メアリーはずい、と顔を町田青年に近付ける。


「ほんとっ!?」

「はい。よく出来ましたね」

「やったーっ!」

「やったね、メアリーちゃん」


 ばんざーい、と両手を上げるメアリー。

 そのままハイタッチをすると、二人揃って笑い合った。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは ゆめみせんせーと おうどんをつくったよ!

 めんを こねこねして ふみふみ!

 ふんで おいしくなるなんて ふしぎだね。 おもしろい!


 おじちゃんも おいしいって いってくれたよ!

 めーちゃん コックさんに なれるかも!

 あしたもいっぱい おりょーりつくろうね!


 あしたもいいこと ありますように!

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