表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/326

7月31日


 七月三十一日。

 買い出しの途中、それ程曇っていないにも関わらず、さらさらと雨が降ってきた。


「あめー!」

「お天気雨、ですね」


 触れているとも思えない、光の粒が如き水の流れ。

 手をかざして漸く分かるか否かといったそれを、メアリーは踊りながら歓迎していた。


「きれー! ね、おじちゃん、きれー!」

「はい。メアリーさん、傘の下へ」

「はーい!」


 町田青年は念の為と持ってきた置き傘を開き、メアリーと共に雨を凌ぐ。

 太陽に透かされて煌めく雨は、成程確かに風情があるものだ。

 暫しそれを堪能しながら、町田青年はふと、思いついたことを口に出す。


「狐の嫁入り」

「きつねさん?」

「はい。晴れの日に雨が降ることを、古くからそう言います」

「へー……!」


 感心した様に頷くメアリーに、少しだけ誇らしい気分になる。

 町田青年は自分の知識が、この幼女の知的好奇心を刺激するのが一番嬉しかった。

 しかし。


「じゃぁ、めーちゃんがおよめさんになるときも、おてんきあめふる?」

「えっ」

「だって、めーちゃんきつねさんみたいって、よくいわれるもん!」

「…………」


 きゅんきゅん、と鳴きマネをするメアリーに、町田青年の顔は難しい物となった。

 メアリーが嫁入り。男性と、結婚。

 ……狐の嫁入りは、嫁の父親が泣いているからかもしれないと、町田青年は妙に納得してしまった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは おてんきあめだったよ!

 おそらは はれてるのに あめふってたの!

 きれーで すき!


 おてんきあめは きつねさんが けっこんするときなんだって。

 きつねさん およめさんになったのかな?

 めーちゃんのときも おてんきあめ ふるのかな?

 きれーだから ふると いいかも!


 あしたもいいこと ありますように!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ