7月31日
七月三十一日。
買い出しの途中、それ程曇っていないにも関わらず、さらさらと雨が降ってきた。
「あめー!」
「お天気雨、ですね」
触れているとも思えない、光の粒が如き水の流れ。
手をかざして漸く分かるか否かといったそれを、メアリーは踊りながら歓迎していた。
「きれー! ね、おじちゃん、きれー!」
「はい。メアリーさん、傘の下へ」
「はーい!」
町田青年は念の為と持ってきた置き傘を開き、メアリーと共に雨を凌ぐ。
太陽に透かされて煌めく雨は、成程確かに風情があるものだ。
暫しそれを堪能しながら、町田青年はふと、思いついたことを口に出す。
「狐の嫁入り」
「きつねさん?」
「はい。晴れの日に雨が降ることを、古くからそう言います」
「へー……!」
感心した様に頷くメアリーに、少しだけ誇らしい気分になる。
町田青年は自分の知識が、この幼女の知的好奇心を刺激するのが一番嬉しかった。
しかし。
「じゃぁ、めーちゃんがおよめさんになるときも、おてんきあめふる?」
「えっ」
「だって、めーちゃんきつねさんみたいって、よくいわれるもん!」
「…………」
きゅんきゅん、と鳴きマネをするメアリーに、町田青年の顔は難しい物となった。
メアリーが嫁入り。男性と、結婚。
……狐の嫁入りは、嫁の父親が泣いているからかもしれないと、町田青年は妙に納得してしまった。
■メアリーの にっき■
きょうは おてんきあめだったよ!
おそらは はれてるのに あめふってたの!
きれーで すき!
おてんきあめは きつねさんが けっこんするときなんだって。
きつねさん およめさんになったのかな?
めーちゃんのときも おてんきあめ ふるのかな?
きれーだから ふると いいかも!
あしたもいいこと ありますように!




