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7月30日
七月三十日。
日記を書く折、ふと、メアリーがカーテンを開けると。
窓の向こうに、滞在者がいた。
「ふぇっ」
セミである。
網戸の向こうで、セミが羽を休めていたのだ。
何でもない夜の1ページではあるが、実際に見ると心臓に悪い。非常に悪い。
「うぇぇ……」
そっとカーテンを戻す。
セミは見えなくなったが、未だに鳴き声は続いていた。
もしかしたら、中に入ってきてしまったのでは? という疑問がちらつくが、窓はしめきっている。
入る筈はない。しかし、恐ろしい。
「……やだなー」
ごそごそと日記を中断し、寝床に入る。
彼女の中で、セミが苦手の部類に収まった瞬間であった。
■メアリーの にっき■
きょうは おてつだい いっぱいしたよ!
あついけど クーラーさん あるから ひえひえ!
がんばったから ぎゅーにゅーの アイス もらいました! おいしい!
あさから いーっぱい おてつだいしたから おそら みてな
(この付近はクレヨンで書いた字がぐちゃぐちゃになっていて読めない)
もー やだ! セミさん やだ!
あしたもいいこと ありますように!




