7月28日
七月二十八日。
今年も蝉時雨が、鳴り響き始めた。
「……うるさーい!」
「セミ、鳴いてるわねー」
「せみ?」
「そーよ。ほら、あそこにいるでしょ?」
真っ昼間の散歩道。
じーわ、じーわ、じじじじじと鳴く蝉の声に、メアリーは麦わら帽子を抑えて叫んだ。
外国人は虫の音をただの雑音というが、メアリーにも適用されるのか。
うるさいうるさいと、うるさい彼女に苦笑しながら、夢見は電柱の上を指差す。
「どこー?」
「ほら、あそこ」
「……わー」
メアリーが見上げた先にいたのは、焦げ茶色の奇っ怪な何か。
じじじじじと音を鳴らすソレ……油蝉と呼ばれる虫を、メアリーは微妙な顔を浮かべながら。
「……うちゅうじん?」
「違うわねー」
難しげに首を傾げるのであった。
この夏付き合うことになる、夏の音楽家との出会いであった。
■メアリーの にっき■
きょうは せみさんが ないてたよ。
じじじじじーって うるさいの。
ヘンなかたちしてたから きっと うちゅーから やってきたんだね。
うちゅーには ヘンなのが いっぱいって めーちゃん しってるもん。
にっぽんは せみさんみたいな うちゅーじんが いっぱいなんだって。
こわいね。 でも おじちゃんがいるから あんしんかな?
あしたもいいこと ありますように!
せみさん おねんねのときは しずかにしてね!




