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1月21日

今週は夢見さん回です


 一月二十一日。

 栄枯盛衰。

 または、諸行無常の響きあり、盛者必衰の理をあらわす、といったところか。


 その言葉を知らねども、もし知っていたならば。

 今のメアリーは、そう呟かずにはいられなかっただろう。


「……ゆ"き"た"る"ま"さ"ぁ"ん"……」

「……溶けて、しまいましたね……」


 ……溶けてしまった雪だるまの前に跪くメアリーを見て、町田青年はそう思わざるを得なかった。

 朝、七時半。行ってきますの挨拶をした矢先の出来事であった。


***


「……成程、だからそんなにめそめそしてたのね」

「ゆ"き"た"る"ま"ぁ"……」

「……なるべく早く来てくださいって話だったけど、授業サボって正解だったわ」


 町田青年のメールにすわ一大事かと、朝一でやって来た夢見は、めそめそと泣くメアリーを見て頭を抱えた。

 何せ原因が雪だるまである。多感な幼女には申し訳ないが、失われたモノ……というより、蒸発したモノは戻ってこないのだ。

 なんとかしなければならないが、どうにもならない。世は常に儘ならぬものである。

 

「……まぁ、うん」


 こんな時、町田青年ならば何と言うか。

 少し考えながらも、メアリーの頭をぽん、と撫でて。


「……雪だるまさんは、雪の国に帰っちゃったんだよ」

「ゆきのくに……?」

「うんうん」


 誤魔化すことにした。

 大人の悪い癖であり、子どもの夢の切欠である。


「雪は雪の国から来るからねー。雪の国に帰らないといけないんだ」

「そうなの……?」

「そうなのー」

「そうなんだ……」


 見え透いた嘘である。

 だが、メアリーは納得したのか、涙を拭いて頷いた。


「……あのね、めーちゃんはね」

「うん」

「まだ、かえらなくて、だいじょぶだからね」

「うん」

「……かなしくなくて、だいじょぶだからね?」

「うんうん。安心だね」


 この子は何処から来て、何時までいて、何処へ行くのか。

 分からなくとも、夢見は彼女をきゅっと抱きしめる。

 ……町田青年は別れの時、受け止めきれるだろうかと、一抹の不安を抱えながら。



 ■メアリーの にっき■


 きょうは ゆきだるまさんが ゆきのくににかえっちゃったよ。

 めーちゃん すっごく かなしかった。 さみしかった。

 でも ふゆになったら きっとあえるよね。


 かえってきた おじちゃんが ゆきだるまの えを かいてくれたよ。

 おじちゃんのかく いつものえじゃなくて とっても かわいい ゆきだるまさん。

 だいじな だいじな たからものに するんだ。


 あしたもいいこと ありますように。


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