7月15日
七月十五日。
今日は、比較的涼しい日だ。
「……うちわ、ぱたぱたするよー!」
「おぉ、ありがとうな」
そんな日は、メアリーは専ら団扇を扇ぐ係を務める。
実際に涼しく思えるかはともかくも、小さな子が懸命に何かをする様は、大人心を擽るものだ。
「じゃぁお返しに、この六天縁が扇いで進ぜよう」
「よきにはからえー!」
「ははぁ、貴人を扇ぐという大役、然と果たして見せましょうぞ」
実際に擽られた六天縁は、呵々大笑としながらも、優雅に、的確に団扇を扇いでみせる。
たかがうちわ、されどうちわ。
「……きもちーねー!」
「ははは、それは何より」
老練な団扇捌きに、メアリーは心地良さげに目を細めるのであった。
客と店員が逆転している様にも思えるが、それでも喫茶“MARY”にいる全員が満足していたのであった。
■メアリーの にっき■
きょうも うちわ ぱたぱた がかりです!
うちわを おきゃくさんに ぱたぱたするよ!
きもちよく なってもらうの! がんばってます!
たまーに おきゃくさんにも ぱたぱた してもらえるの!
ぱたぱた されるの きもちーねー!
だから もっと ぱたぱたするよー!
あしたも ぱたぱた がんばる!
あしたもいいこと ありますように!