6月19日
■メアリーの にっき■
きょうは かぜさんが あるから かんきしたよ!
ちょっと すずしい! いいね!
でも まど とちゅうから しめてーって いわれちゃった。
なんでだろーね?
もうすぐ くーらー? っていうの つけるんだって!
どうなるんだろ? たのしみだね!
あしたもいいこと ありますように!
六月十九日。
今日は、窓を開けて換気をしている。
「……わっ、カードが」
「あー、何も見てない。見てないぞー」
涼しい風が店の中を通り抜ける度に、時折物が散乱するが、それ以上に淀んだ空気も吹き飛んでいく。
悪態をつく者もいながらも、苛立つ素振りを見せる者は、客にも、メアリー達にもいなかった。
「……きもちいーね!」
「そうねぇ。まだ暑くないから良いわねー」
窓枠に縋りながらそう言うのは、店員たるメアリーと夢見である。
ちょっとした休憩時間だから良いものの、風が吹く度に振られる臀部は、目の保養であり、理性の毒である。
そんな折、強い風が吹けば。
「…………!!」
「きゃっ」
「わっ」
ふわりと舞い上がるスカートが、二枚。
ちらりと見えたそれらに、皆が釘付けになった後。
「……メアリーさん、夢見さん」
「なーに?」
「何ですかー?」
「窓、閉めましょうか」
「「えーっ」」
「いいから」
町田青年は、努めて顔を冷やしながら。
むっつりと、そう命じるのだった。