6月14日
六月十四日。
今日は、ちょっと趣を変えてみている。
「……どれ、王手」
「うにににに……っ!」
噂を聞きつけた六天縁が、将棋を持ち込んで来たのだ。
メアリーとの対戦で勝つのは些か大人気ないようにも見えるが、対する六天縁は始めから飛車角金銀を落としているのだ。
如何に子供相手とは言えど、中々勝てる物ではない。年季の違いを存分に見せつけていた。
「……も、もっかい!」
「ははは。よぉしよし。ではもう一回やってやろうじゃないか」
珍しく負けず嫌いを出したメアリーが、びしりと六天縁へ挑みかかる。
そんな幼女に観客達もやんややんやと囃し立てている。
勝ち続けの六天縁へのブーイングもあるが、そこは常連客として引き際を弁えた勢いであった。
「……では、次は自分が、サポートしましょう」
「おじちゃん!」
そうして遂に、幼女のセコンドに店主が立つ。
理知的な町田青年に、ひらめきのメアリー、そして健老なる六天縁。
三者が向かい合った瞬間に、喫茶“MARY”は大いに湧いていた。
■メアリーの にっき■
きょうは しょうぎを したよ!
いっぱい まけた! くやしい!
でもでも さいごは おじちゃんと いっしょにやって かてたよ!
やったね!
おじちゃんは あたまがよくて すごい!
めーちゃんも がんばって つよくなるよ!
あしたもいいこと ありますように!