6月8日
六月八日。
今日は、ゆっくりと時間が進んでいる。
「……むにゃ」
「お眠ですか、メアリーさん」
久しぶりに、客足が少ないのだ。
本来なら歓迎すべきではないが、少ないと言っても開店当初はこのくらいだったのだ。
採算は充分に取れるので、寧ろ偶には、こういう日があっても良いと町田青年は思っていた。
「ねむぅ、にゃいよぉ……」
「そうですか。では、どうぞ」
「んぅ……」
メアリーは否定するものの、瞼はとろんと落ち、こっくりこっくりと船を漕いでいる。
放置する訳にもいかないので、町田青年はそっと、メアリーを抱える。
姫抱き、ともすれば赤子に対する様なその抱き方は、彼女の眠気を更に増した。
「……すぅ」
「……おやすみなさい、メアリーさん」
彼女の眠りについたところで、町田青年はそっと、彼女を四人席のソファに横たえる。
穏やかな寝顔を撫でながら、町田青年とメアリーの、穏やかな時間は、ゆっくりと過ぎていった。
■メアリーの にっき■
きょうは おきゃくさん すくなかったよ!
だから めーちゃん おきゃくさんの せきで おひるねしちゃった!
ぐーっすり ねむれて きもちよかった!
おじちゃんが おなか ぽんぽんしてくれたから さむくなかったよ!
せんせーに じまんしたら すっごく うらやましそーだった!
えへへー せんせーも すきだけど めーちゃんの とくべつなのだ!
あしたもいいこと ありますように!