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5月28日


 五月二十八日。

 ヤツが出た。


「……い"っ!?」

「ふぁっ!?」

「……おや」


 忙しかったせいか、はたまた何処からか忍び込んできたのか。

 ヤツは黒光りする身体を這わせながら、壁を蠢いていた。


「ご、ごごごっご……!?」

「む、むし!」

「ゴキブリですね」


 そう、ゴキブリである。

 親指ほどの個体が一匹、流しの隙間から這い出て来たのだ。

 その気味の悪さに、夢見とメアリーは抱き合いながら遠ざかる。


「せ、せせ、せんぱっ、せんぱひ……っ!?」

「な、なにあれっ! なにあれーっ!?」

「……閉店後で良かった、ですね」


 ぴた、と動きを止めた虫を刺激しない様に、町田青年はゆっくりと立ち上がる。

 そして、そっと、そっと近付くと。


「えい」

「「えっ」」


 素手で、ゴキブリを捕まえた。

 そのままぐしゃりと潰せば、小さな虫はひとたまりもない。

 町田青年の手の中で、僅かに足が動くばかりであった。


「……殺虫剤と、消毒液を持ってきて貰えますか」

「え、あ、は、はい!」

「……すごーい」

「まぁ、前の職場で慣れてますから」


 事も無げに拭き取り、瀕死のゴキブリに殺虫剤を撒きながら、町田青年は鷹揚に頷く。

 メアリーと夢見には、その無表情の顔が今日はより一層、頼もしく見えた。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは ごきぶりが でた!

 ごきぶり きもちわるい!

 こわい!


 でも おじちゃんが ごきぶり たいじしちゃった!

 てで ぎゅーって! すごい!

 おじちゃんは やっぱり すごい!


 でもでも もう でないようにって いっぱい おそうじ することになったよ。

 もうでないと いいなぁ。 ほんとに。


 あしたはいいこと ありますように!


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