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5月23日

にゃーん!


 五月二十三日。

 今日もまた猫が一匹、喫茶“MARY”で遊んでいた。


「にゃーん!」

「……っ!」

「にゃにゃー?」

「……っ! ……っ!」

「夢見さん、落ち着いて」


 清楚なホワイトブリムの代わりに、白くチープな猫耳。

 それが本格的なメイド服とのギャップを生み……破壊力を増していた。


「メアリーさん、このままでは夢見さんが大変ですよ」

「にゃーっ!」

「……っ!」

「夢見さん。夢見さん。落ち着いて」


 そう、猫耳メイドである。

 百均ショップで買った猫耳カチューシャと、以前より作業服として採用しているメイド服を着たメアリーが、思う存分愛嬌を振り撒いていたのだ。

 買い出し帰り、戯れに夢見が買って来たのが発端ではあるが……。

 

「にゃーにゃ?」

「……っ!」

「なんだこれカワイ過ぎか」

「メアリーちゃん! 写真! 写真撮らせて!」

「にゃおーっん!」


 ……それにしても、酷い惨状であった。

 客達は悶絶したり、こぞって抱き上げようとしたり、写真を撮ろうとしている。

 メアリーがそれに応えて猫の真似をするだけで、こども好き(どういう意味であっても)な若い客達は黄色い声を上げるのだ。


「夢見さん。深呼吸です。落ち着いて」

「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……!」

「それは違います。何を産むんですか」

「愛!」

「せめて物質にしてください」


 反面、独占したい気持ちを抑えながら悶え苦しむのは夢見である。

 発端者であるのだが、お客の望みを優先すべきという町田青年の意向を最大限尊重するが故の苦しみであった。


「……閉店したら、思い切り可愛がってあげましょう」

「はい……!」


 尤も、可愛がりたい衝動を抑えているのは夢見だけではない。

 閉店したら思う存分撮り尽くす為、町田青年は後ろ手に、デジタルカメラのレンズを拭いた。



 ■メアリーの にっき■

 

 きょうは めーちゃん ねこさんでした!

 ねこさんは にゃーにゃーして ごろごろするの。

 それで みーんなに かわいがって もらうんだよ!

 

 おみせが おわったら おじちゃんにも せんせーにも かわいがってもらった!

 いっぱい おしゃしん とったよ!

 いっぱい ぎゅーって してもらったよ!

 おゆはんは おさかなでした! おいしー!

 

 あしたもいいこと ありますように!

 

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