5月11日
五月十一日。
今日は、メアリーが珈琲を淹れている。
「ゆっくり、ゆっくり回してください」
「はーい!」
やりたいと言い出されたからには、やって貰うのが町田青年の流儀であった。
とはいえ、お客様に出す訳にもいかないので、最初の実験台……もとい、試飲役は町田青年である。
「ぐーるぐる、ぐーるぐる」
「その調子、その調子」
珈琲豆の香ばしい匂いが、辺りに充満する。
……やや焦げ臭い様な気がするのは、ご愛嬌というものだ。
そうして粉状になった豆をセットして、小さなカップでお湯を注ぐ。
「……できた!」
「はい、よく出来ました」
「えへへーっ」
出来上がったそれを飲む前に、まずは完成に至ったのを褒める。
頭を撫でられて嬉しそうにしている様は猫の様だが、いつぞやの狸の様にも思える。
「では、頂きます」
「どーぞ、めしあがれ!」
一頻り撫で回した後、町田青年は焦げ臭い香りを鼻腔で楽しみ、一気に飲み干す。
……焦げによる、壮絶な苦味が町田青年を襲ったが、彼は全く気にせず。
「……おいしいです」
「よかったー!」
にっこりと微笑んだ。
“メアリーが淹れた珈琲”というのが、何よりも嬉しい町田青年であった。
■メアリーの にっき■
きょうは こーひーを つくったよ!
おじちゃんに のんでもらったら おいしい! って!
うれしい!
でもでも めーちゃんが のんだら すっっっっごく おいしくなかった!
ニオイも ぜんぜんだめ! でも おいしかったって。
なんでだろ? ふしぎ。
あしたもいいこと ありますように!