表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/326

5月4日


 五月四日。

 今日はキャンプ三日目。近くの川へと遊びに来ている。


「つめたーい!」

「うわっ、ホント! つめったぁ……!」

「滑らない様に、気をつけて下さいね」

「「はーい!」」


 五月も始まったばかりとなれば、水も冷蔵庫で冷やした様だ。

 生水なので飲まない様に注意はしているが、それより身体を温められる物が必要かと、町田青年は石で小さな竈を組む。

 火を起こしながら、隣に座っている小動物を見下ろした。


「火に近付き過ぎない様に」


 きゅう、と小動物……タヌキが鳴く。

 懐いてしまったのか、彼はメアリーの後ろをくっついて歩くことが多い。

 メアリーも母性本能を擽られているのか、彼を玩具の様に扱うことなく、優しく撫でるだけに留めているのだ。


「……メアリーさんと遊んでくれて、ありがとうございます」


 きゅう、とタヌキがもう一度鳴く。

 動物とはいえ、友達が出来たことは素直に喜ばしいことである。そう、町田青年は考えている。

 だから、少し可笑しな話だが、動物相手でも御礼は言うべきだと彼は思った。


「でも、明日で最後ですので」


 同時に、残酷な現実も知らせるべきだとも、思っていた。

 タヌキの暮らすのは栃木の自然。メアリーが暮らすのは東京の街である。

 住む場所が違うのだから、いつまでも一緒とはいかないだろう。


「どうか、待たないでくださいね」


 待てど暮らせど、次に訪れられるのは何時か分かったものではない。

 だからどうか待たず、自然に戻って欲しい。

 それは人間のどうしようもないエゴであり、純粋な気遣いであった。


 それを受けてか、どうかは誰にも分からないが。

 タヌキはきゅう、と鳴くのみであった。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは かわあそび したよ!

 たぬきさんも いっしょ!

 たぬきさん めーちゃんの うしろを ついてくるの!

 かわいいね!


 かわは とーっても つめたくて きもちいいの!

 でもでも ひえると いけないんだって。

 だから おじちゃんが スープつくって まっててくれたよ!

 やさしいね!


 おほしさまが こっちは きらきらしてる!

 とーっても きれいで いいおそらだねっ!


 あしたもいいこと ありますように!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ