表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/326

5月3日


 五月三日。

 今日は少し風が強いが、キャンプに支障はない。

 

 支障があるとすれば、メアリーの“お友達”くらいだ。


「……このこ、めーちゃんのおともだちー!」

「……これは」

「うわっ、可愛い……!」


 ふわふわの毛並みに、くりくりの目。

 大人しそうに撫でられながら、彼ないし彼女は穏やかに目を細めていた。


「狸」

「たぬき?」

「可愛いタヌキさんねー! 餌が欲しいのかな?」


 そう、タヌキである。

 餌を求めてやって来ているのか、それともメアリーに懐いたのか。

 メアリーが森に入るや否や現れ、頭を撫でられていたのであった。


「……エキノコックス」

「昨日もちゃんと手は洗ったから、大丈夫だと思いますよ?」

「おててあらったよ!」

「はい。分かっています」


 厄介な寄生虫の懸念はあるものの、タヌキは大人しくじっとしている。

 とはいえ、野生の獣である。

 いつ何時噛みつくかもわからないので、町田青年はそっと子供用の厚手袋を渡す。


「狸と遊ぶ時は、必ずこれをつけてください」

「はーい!」


 これで一先ずは……本当に一先ずは安心だろう。

 そう町田青年が考えていると、夢見がいそいそとドライフルーツを手に取る。


「餌とか、あげちゃっても大丈夫かな……?」

「……いーい?」

「…………そうですね」


 メアリーと夢見に見上げられ、少しだけ考えこむ。

 現地人ではない為、ある程度遊びでやったところで、後々自分達が困ることはない。

 だが、旅行者が何の気なしに餌をやって、問題化する動物は中々に多いと聞く。


「……見た所野生ですから、あげるべきではないかもしれません」

「うぅん……」

「そっかー……」

「……ですが、自分もこの辺りの事情には、詳しくないので」


 そう言うなり、町田青年は懐からパンフレットを取り出す。

 キャンプ場で渡された、キャンプ場の説明書代わりの物だ。

 隈無く調べたつもりだが、現地で初めて分かることも少なくない為、こういった物も町田青年は重宝している。

 受付の場所と時間を確認すると、町田青年は改めて頷いた。


「……スタッフさんに聞いて見ましょう。問題がなければ、餌付けをして良い、ということで」

「「はーい!」」


 自分で判断がつかないことは、係員の言うことをしっかりと聞く。

 それが、町田家の家訓であった。


 ■メアリーの にっき■


 おともだちは たぬきさんだったよ!

 たぬきさんは いぬみたいな たぬきさん!

 かわいいけど かまれたら あぶないから てぶくろ だいじ!

 さわったら おてても あらおうね!


 えづけして いいって きいたら かかりのひとも いいよって いってくれたよ!

 りんごとか ばいてんで うってた!

 おいしそうに たべてたよ! うれしいね!


 またあしたも あえるかな?

 あしたもいいこと ありますように!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ