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4月28日


 四月二十八日。

 今日は、揚げ物の日だ。


「揚げ物ですか?」

「はい。唐揚げでも作ろうかと」

「からあげー!?」


 雨がしとしとと降る中、町田青年はそう決めた。

 此処最近筍尽くしで、ヘルシーレシピだったからだ。

 切った鶏肉を醤油と生姜などで作ったタレに浸けながら、彼は鍋と油を用意する。


「からあげって、つくれるの!?」

「はい」

「すごい!」

「揚げ物って普段やらないもんねー」

「……揚げ物、増やしますか?」

「……い、いえ、大丈夫デス」


 目を輝かせるメアリーに対して、夢見は苦笑いを浮かべながら首を振る。

 町田青年が揚げ物に慣れているのは知っているが、食べ過ぎれば贅肉となるのは明らかだ。

 だからこそ、どれだけ美味くとも、美味いからこそ自重せねばならないのである。

 乙女の身体は、中々維持が難しいのだ。


「……下拵えも終わりましたので、揚げます。油が散ると危ないので、遠くで見ていて下さいね」

「はーい!」


 間近で見物しようとしていたメアリーを遠ざけ、町田青年は片栗粉をまぶした鶏肉を、熱した油に静かに入れる。

 じゅぱ、ぱりぱり。激しい音が鳴り響き、メアリーはぴゃっ、と頭を隠す。


「おじ、おじちゃん、だいじょうぶー!?」

「はい。大丈夫です」

「火事にならないし、火傷もしないから大丈夫よー」


 恐る恐るとメアリーが顔を覗かせれば、煮え滾る油に、町田青年は全く動じることなく鶏肉を入れ続けていた。

 更に中の鶏肉を一旦取り出すことも忘れていない。


「……すごい!」

「スゴイんですって」

「……そうですか」


 オトナにとっては些細なことだが、子供にとってはスゴイことだ。

 改めて褒められたことに気恥ずかしく思いながら、町田青年は少しだけ、猫背気味の背を伸ばした。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは からあげのひです!

 からあげのひは からあげを たべます!

 おいしい!


 でもでも からあげさんは じゅわー ぱちぱちって おとが すっごいの!

 あぶらも ぱちぱちしてて めーちゃん ちょっとこわい。

 でも おじちゃんは ぜんぜんこわくなさそうに ぱちぱちしちゃいます。

 すっごい! おじちゃん すっごい!


 おじちゃんが すっごいので めーちゃんは おいしー からあげを たべれました!

 ありがと おじちゃん!


 あしたもいいこと ありますように!


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