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4月27日


 四月二十七日。

 今日は筍ご飯最後の日である。


「……うむ、馳走になった」

「Всё было вкусно」

「おそまつさまでしたー!」


 筍ご飯を気に入った人々は勿論のこと、口コミで耳にした人々も味わいたいと集まってくる。

 出来るだけを用意したが、閉店までに残ることは嬉しいことになさそうであった。


「おいしい?」

「えぇ、とーっても美味しいわよぉ」

「よかったー!」


 加えて毎度のことながら、メアリーの接客も新規客に好評であった。

 メアリーはどういう訳か、他人の好意を得ることに長けている。

 元より子供嫌いは寄り付かないこともあって、人懐っこい彼女は老若男女問わずに好かれていた。


「メアリーちゃん、頑張ってますねぇ」

「はい」


 彼女の存在は、間違いなく喫茶“MARY”の特色である。

 “MARY”といえばメアリー、というのも何だか可笑しな響きだが、紛れも無い事実であった。

 しかし。


「今回は、夢見さんのお手柄だと思います」

「え……」

「ありがとうございます。お祖母さんにも、よろしくお伝え下さい」

「あ、えーっと……」


 今回の功労者は筍を送った夢見の祖母であり、その筍も夢見がいなければ送られなかった。

 なればこそ、町田青年が感謝する相手はメアリーだけであってはならない。


 とはいえ、急に褒められては夢見も困惑するワケで。

 

「……か、買い出し行ってきますッ!」

「えっ」

「たけのこ! たけのこ買わなくちゃ!」

「い、いえ、大丈夫です」

「じゃぁ何か!」

「み、みりんを一本」

「任せてくださいっ!」


 努めて真っ赤な顔を見せない様にして、夢見は裏口から飛び出す。

 呆気にとられる町田青年を余所に、客達とメアリーははニマニマと見つめていた。

 そう。こういった甘い風景もまた、喫茶“MARY”の特色なのだ。


 ■メアリーの にっき■

 

 きょうは たけのこ さいごのひ!

 みんな とーっても おいしく いただきます しました!

 めーちゃんも ばんごはんは いっぱい たべました!

 おいしいって しあわせ!

 

 あと せんせーが ほめられて おかお まっかだったよ!

 せんせーは おじちゃんが だいすきだから しょーがないね!

 にまーって しちゃうね! にまーって!

 

 いつか おじちゃんが せんせーのきもちに きづいたら いいな!

 あしたもいいこと ありますように!

 

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