4月26日
四月二十六日。
筍は後二日分。つまり今日と明日の分があった。
「……Что это?」
「たけのこごはんだよー!」
「タケノコ、ゴハン?」
「そー!」
とはいえ、筍ご飯という物が何かを、日本語に詳しくない彼がメニューだけで想像するのは余りにも難しい。
オウム返しをする外国の男に、町田青年は筍ご飯の写真を見せる。
「これが、筍ご飯です」
「Ну……」
「おいしいよ!」
「Понятно……」
男は悩ましげに唸ると、やがて意を決した様に頷く。
存外、彼はチャレンジャーであった。
「Дайте, пожалуйста……タケノコゴハン」
「たけのこごはん、ひとつでーっす!」
「はい」
注文のままに、町田青年は飯を茶碗によそう。
そして少しだけ考えると、箸と木匙をお盆に載せて出した。
「筍ご飯です」
「Ох……」
湯気の立つ筍ご飯に、男は感嘆の唸りを上げる。
そして、盆の隅に置かれた木匙に気付くと、フッと笑顔を見せた。
「спасибо」
「どうぞ、お召し上がりください」
「めしあがれ!」
「съем с удовольствием」
有難そうに手を合わせると、彼は木匙で筍ご飯を掬う。
次いで口に含むと、にや、と口角を吊り上げた。
「……очень вкусный」
「ありがとうございます」
その表情だけで、何を言いたいかは分かる。
町田青年もとても満足気に、頭を下げるのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは がいこくのおじちゃんが たけのこごはんを たべてたよ!
とっても おいしそーに たべてたの!
めーちゃんも おいしそーだったから よるごはんは いっぱいたべたよ!
おなかいっぱい!
たけのこごはんは あしたで おしまいなんだって。
もっと たべたかったなー。 あしたも いっぱい たべよ!
あしたもいいこと ありますように!




