4月25日
四月二十五日。
今日は、数量限定メニューがあった。
「……ほう、筍飯か!」
「はい」
筍ご飯である。
届いた物を商品に使うのは心苦しい物があったが、町田宅の三人で食べきるには、やや量が多かったのだ。
それでも事情を知らないお客様、とりわけ六天縁の様な人物には大変好評であった。
「こりゃぁ良い。筍飯なんてもう長い間食べてないからなぁ」
「めーちゃんは、きのうたべたよ!」
「うむ。どうだった?」
「おいしかったー!」
「そうかそうか。では、筍飯を一つ」
「はーい! たけのこめし、ひーとぉーつっ!」
「はい」
注文通りにメアリーが唱えれば、それに応えて町田青年が炊飯器の一つを開く。
中からホカホカと湯気が立つ中、躊躇いもせずに彼はしゃもじを突っ込み、茶碗によそった。
艶やかな筍が、やや肉厚に切られ、散りばめられている。
その香りにぐびり、と。六天縁が生唾を飲み、水を口に含んだ。
「お待たせしました」
「うむ、待った! 箸をおくれ」
「はい」
綺麗に磨かれた、暗紅色の箸――蚤の市で、町田青年が買った品だ――を手渡され、六天縁はまず一口食べる。
舌の上で、僅かに筍が香る。
それを舌で存分に愛でた後、六天縁は米と一緒に噛み締めた。
「……舌も感覚器であるからして。飯というのを楽しむのは、舌先三寸で事足りるのだ」
「なにごとー?」
「美味、と言ったのだよ」
「おいしい?」
「美味しい!」
「「んー!」」
元気良くサムズアップ。
幼女と老人の感想は今、一つになった。
お褒めに預かった町田青年は、小説家の生品評を堪能したことと、美味いと言って貰えた満足感から。
「ありがとう、ございます」
やや口角を上げて、頭を下げるのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは すーりょーげんてー めにゅー!
たけのこごはんです! おいしい!
おじーちゃんも おばちゃんたちも みんな よろこんでくれたよ!
でもでも いちばん よろこんでたのは おじちゃん!
おじーちゃんが おいしい! って いったとき すっごく うれしそうだったの!
おいしい! っていうの つくったひとも うれしいんだね!
めーちゃんも おべんと つくったことあるから しってます!
おゆはんは たけのこごはん たべたよ!
おじーちゃんたちの いうとおり! とっても おいしい!
あしたのぶんも あるんだって!
あしたもいいこと ありますように!




