4月16日
四月十六日。
閉店後、町田青年は運動をしていた。
「……二十二、二十三、二十四、二十五……っ」
「……おじちゃん、なにしてるのー?」
「腕立て伏せよー。腕の筋肉を鍛えてるの」
腹筋、背筋、腕立て伏せ。
これらの運動を、一日百回ずつ。
これを今日から、毎日やると決めたのだ。
「……三十一、三十二、三十三、三十四……っ」
「すごいねー……っ」
「先輩、やると決めたらやるからねぇ」
仕事だけでは、筋肉はあまり発達しない。
それだけなら構わないが、大人の場合、段々と今より衰えていくのだ。
衰えていた身体を鍛え直すべく……メアリーを抱き上げる時、力を入れずとも済む様に。
町田青年は、己を鍛えることにしたのである。
「……四十五、四十六、四十七、四十八、四十九……っ」
「……めーちゃんもやるっ!」
「メアリーちゃんも?」
「うんっ!」
とはいえ、鍛えるという意味を知らぬメアリーにとっては、楽しい遊びにも見えるのだろう。
彼女はててて、と駆け出すと、町田青年の隣で真似し始めた。
メアリーの細腕では彼女の身体を支えられず、腕立て伏せにはなっていないが、それでも楽しそうにやっている。
「……五十七、五十八……五十九っ」
「ろくじゅー!」
「……はいはい。六十一 ー」
それに呆れながらも、くすくすと笑って。
夢見もまた、その列に加わるのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃんが とれーにんぐ してたよ!
とれーにんぐは からだを きたえる しゅぎょー!
めーちゃんも がんばりましたっ!
おじちゃんは ひゃっかい! せんせーは さんじゅっかい!
めーちゃんは じゅっかい!
いっぱい とれーにんぐしたよ!
これで せんせーみたいな からだに なるかな?
あしたもいいこと ありますように!