4月11日
四月十一日。
メアリーに、ご褒美が出来た。
「おつかれさまでしたっ!」
「はい、お疲れ様でした」
「お疲れ様でしたーっ」
閉店後、元気よくメアリーがシメの挨拶をする。
それに合わせて、町田青年も夢見も頭を下げた。
喫茶“MARY”の、隠れた恒例行事である。
「ね、ね、おじちゃん!」
「はい。……夢見さん、二階からコップを持ってきて貰えますか?」
「はーい。ちょっと待っててね」
「うんっ!」
わくわく、うきうき、という音が聞こえそうな程、メアリーは喜びを全身で表している。
元気良く跳ね回る彼女の為に、町田青年はロックアイスを取り出す。
「お待たせーっ。メアリーちゃんはいつものコップでいい?」
「うんっ!」
「では、お注ぎ致します」
「くるしゅうない!」
町田青年が恭しく振る舞えば、メアリーもそれに合わせて仰々しく振る舞ってみせる。
いつか見た時代劇そのままで、夢見がくすくすと笑っていると、町田青年がサイダー缶を開け、注ぎ始めた。
しゅわしゅわ、ぱちぱち。
炭酸が弾け、大きな氷が僅かに割れる音が静かに響く。
メアリーはお子様用の、ウサギさんがプリントされたコップを、町田青年と夢見は、店で使うグラスを見て、うっとりとしていた。
「きのうより、きれーっ!」
「ロックアイス使うと、安物のサイダーでも結構変わりますねぇ」
「はい。見た目も味の内というのも、案外馬鹿に出来ません」
思わぬ高級感を楽しみながら、三人は杯をそれぞれ手に取る。
そして。
「「かんぱーいっ!」」
「……乾杯」
お疲れ様、の乾杯を行った。
喉を潤すサイダーは、缶で飲むより爽快に感じた。
■メアリーの にっき■
きょうはね サイダーを おみせでつかう こおりで のんだよ!
ろっくあいすってやつ! こーきゅーかん たっぷり!
こおりが おっきいけど なんだか さわやか!
めーちゃん これ すきです!
あしたもって おねがいしたら いいよって!
とーっても たのしみ!
あしたも おしごと がんばろー!
あしたもいいこと ありますように!