4月9日
四月九日。
忙しい仕事の時間が終われば、楽しい団欒の時間だ。
「あーん!」
「はーい、あーん……ぱくっ!」
「おー! ひとくち!」
メアリーの口に余るミートボールも、大人である夢見ならば一口だ。
それが面白くて、メアリーはどんどんと食べ物を夢見に差し出す。
「じゃぁ、メアリーちゃんも……はい、あーん」
「あー!」
「ぱくっ! ……はい、よく出来ました」
「んふふー!」
代わりに夢見もミートボールを差し出せば、メアリーはちっちゃな口をいっぱいに開けて、ミートボールを一口、二口。
ドラマで見た光景を真似している様だが、傍から見れば随分と仲の良い母娘、または姉妹である。
微笑ましい……或いは、人によっては涎が出そうな光景を見ながら、町田青年が茶を楽しんでいると。
「おじちゃんも!」
「はい?」
「おじちゃんも、あーん!」
「……はい」
自分の番が回ってきた。
気恥ずかしさを感じながらも、対岸のメアリーにも届くよう、身を乗り出して口を開ける。
「あーん」
「あー……ん」
「おいしい?」
「そうですね……」
小首を傾げるメアリーに、少しだけ町田青年は言い淀む。
ミートボールは惣菜店で買った物であるから、それ程味の差はないのだ。
ただ……。
「……美味しいです」
「よかったぁ!」
……メアリーの籠めた、真心の分は。
確かに美味しいと、頷く町田青年であった。
■メアリーの にっき■
きょうは あーん してみたよ!
あーんすると ごはんが おいしくなるんだって!
だから せんせーにも おじちゃんにも あーんしてみました!
ふたりとも おいしーって! よかったぁ!
でも たべにくいから とっておきだけに しようねだって。
せんせーも とっておき おじちゃんに あーんするのかな?
あしたもいいこと ありますように!