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1月10日

今日はおやすみデーです。


 一月十日。十時。

 

「…………っ!?」


 今日の町田青年は、二度寝していない。

 いつもより、だいぶ寝過ぎたのだ。

 身体はいつもより快調だが、動揺が彼の心を苛む。


「……良かった……」


 カレンダーを見れば、今日は日曜日。

 仕事の日ではない。急場の仕事もない。そっと、安堵した。


「なにがー……?」

「……あぁ」


 と、その時。

 胸の上で声がした。

 目をこすりながら起き上がるのは、愛らしい幼女、メアリー。

 ちなみに夢見は今日は来ていない。恐らく、ボートを漕ぎに漕いだ結果、筋肉痛で呻いていることだろう。


「おはようございます、メアリーさん」

「おはようございます!」


 にこにこと元気な顔で彼女は笑う。

 その輝く金髪を、ぽふぽふと撫でながら、町田青年は言う。

 

「ちょっと寝過ぎた様な気がしたので、びっくりしました」

「……おじちゃん、びっくりするの?」

「します」

「そっかー」


 びっくり! と驚いてみせるメアリーが可笑しくて、町田青年は(本人なりに)微笑む。

 メアリーを抱きかかえながら身を起こすと、彼女はきゃっきゃと喜んだ。


「今日はどうしましょう」

「どうしよっかー」

「何か希望はありますか?」

「んー? んっとねー……」


 うんうんと考え込むメアリー。

 暫く考えていた様だが、やがて一言。

 

「……おじちゃんといっしょならどこでもいいよっ!」


 と、満面の笑みで言った。

 呆気にとられながらも、町田青年はメアリーの顔を覗き込む。


「いいんですか?」

「うんっ!」

「明日から、自分も仕事ですよ」

「いいのっ! だって……」


 そのくりくりとした瞳は、一切の邪気なく町田青年を映す。

 深い海の様な蒼は、優しげな曲線を描き。


「おじちゃんがげんきなのが、いちばんだもん!」


 そう言ってのけた。

 こうまで言われては、町田青年は反論も何も出来はしない。


「……じゃぁ、仕方ないですね」

「わっ」


 彼女を抱きかかえながら、町田青年は布団へ倒れこむ。

 布団を被ると、暖かい熱がじんわりと包んだ。


「今日はお休みです」

「おやすみ?」

「はい。一日中、ゴロゴロします」

「ごろごろだー!」


 きゃっきゃと笑いながら、町田青年の腕の中でメアリーは暴れる。

 その日は一日中、絵本を読みながら、ゆったりとした時間を楽しんでいた。

 


 ■メアリーの にっき■


 きょうは いちにち ごろごろしてたよ!


 えほんとか いっぱいいっぱい よんでもらったんだ!

 じどーしょも おじちゃんが よんでくれたら らくちんだね!


 ふたりで ゆーっくり おふろにも はいったよ!

 おじちゃんが おうた うたったりしてた! めずらしい! らっきー!


 あしたは しゅくじつだけど おじちゃんは おしごと。

 さびしいけど さおとめが くるって! おじちゃん、あんしんだね!


 あしたも いいこと ありますように!


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