星神のいる世界
遠い時代に創造神の手が離れた世界があった。その世界が生み出された時、創造神は3人の星神を生み出した。世界と存在を共有する少女の姿をした女神。世界を照らす太陽の化身である青年の姿をした男神。世界を見詰める月たる少年の姿をした神。3人の星神が、世界と同時に生み出された。
やがて、創造神は世界を立ち去る。彼の神は新たなる世界を生み出す為に、旅立った。世界を守護する者として、3人の星神を残して。そうして神が旅立った後の世界で、3人の星神は生きていた。愛すべき世界を、世界の中央に存在する、誓約の塔。そこは、創造神が星神達に与えた場所だった。
時は、巡る。人々が世界に繁栄し、世界は緩やかに蝕まれていく。人の中を人の姿で巡る星神達も、やがて病んでいく。世界を満たす人々の負の感情が、世界を蝕む公害が、やがては世界と存在する女神を、死へと追いやった。
それは正確には、死ではなかった。女神は、世界が存在する以上、死ぬ事はない。ただ、誓約の塔で眠りについた。誓約の塔の最上階、祭壇の内側に、存在として眠る。肉体を失った女神は、目覚めを信じて、ただ眠るのだ。
太陽神と月神が、女神の死を受け止めた。世界の傾きを知りながら、彼等はただ、嘆いた。兄弟神の眠りを、彼等は哀しみながら受け止めた。いつか目覚めてくれるようにと、願いながら。
そして月日は、月神すらも歪ませた。女神を欲する幼い月神は、やがて人の中へと身を落とす。太陽神の言葉を振り切り、月神は人の中へと姿を落とした。生命を吸い、力へと変える術を持つ誓約の剣。それは、世界を救う為だけに使う事を許された剣だった。
けれど、月神は、自らの願いの為にそれを用い始めた。その事実に気付いた太陽神は、月神を追う。たとえそれが、月神を更に追いつめる事になろうとも。女神がそれを望まぬ事を、太陽神は知っていたのだ。
眠りについた女神の為に、月神はただ、刃を振るう…………。