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皆本遥香の平凡な毎日  作者: リサ
新聞部とサブメン
5/6

サブメンって……なんだ?

 先生の、人には大声にしか聞こえないその声が通常運転だという意外な事実を知った私たち一年四組。その担任教師によりホームルームがおこなわれた。

 一発目ということで先生の自己紹介があり、生徒の自己紹介があり、健康診断があり、配布物があり、やがて先生のお話の時間になった。

 どうせおもしろくないありがた~いお話を聞かされるんだろうな……と思った矢先。先生の口から意外な言葉が漏れた。

「えー、花咲高校の校訓について語る前に、皆本遥香さん」

「へ!?」

 妙な声をあげた私。クラスメートの視線がこちらを射る。

 先生は、頭をかきかき続けた。

「皆本さん。入学式の後のロングホームルームが終わったら、グラウンドの芝生スペースに来てください、とのことやけん、よろしゅう頼むなー」

「は、はあ……」

 花咲高校のグラウンドは、土の部分をぐるりと囲むように人工芝が植えられている。私もオープンスクールの時、足を踏み入れたことがあったが、なかなかふかふかしていて気持ちよかった。

「でも、先生。どうして芝生に? いったい誰が?」

「予想はつくけど、言ったらアンタが行きたがらんようなるから言わんとくわ。誰がっていうと、花咲高校では有名な二年生、ってなところやな」

 有名な二年生? 春岡綾音はだいぶ有名らしいけど、一年生だ。私の二年生の知り合いというと、長谷川恭介しかいない。

「まあ、新聞部並みの要注意人物やけん、気ぃつけやー」

 先生は意味深なセリフを残し、それからありがた~いお話に入っていった。


 入学式が終わり、ロングホームルームが終わった。ロングホームルームではさっそく委員会や係活動決めがおこなわれ、私は黒板消し係の図書委員になった。これから毎日、休み時間に黒板消しと戯れるのである。

 それはさておき。

 心配そうな理沙に見送られ、私は手ぶらでグラウンドに向かった。“有名な二年生”のことは、理沙や他のクラスメートに聞いてみたけど、皆オドオドするばかりでちっとも情報は手に入らなかった。この学校には、要注意人物が多すぎる。

 グラウンドではたくさんの部活動が練習に励んでいた。二三年生は入学式の日でも部活に励むらしい。結構なことである。

 珍プレーを特集したら軽く三時間特番が組めそうな野球部、十年前にインターハイ出場を決めてから音沙汰なしのサッカー部、某超テニスマンガの技の練習ばっかりしているテニス部などを横目にグラウンドを進む。先生によると、私を呼んだ二年生はグラウンドの向こう側、芝生の真ん中あたりを陣取っているらしい。

 グラウンドで練習する運動部の姿が全て見えるお得な場所。そこの花壇のそばに、空色のピクニックシートを敷いた二年生がおるはずや……そう先生は言っていたけど、芝生の隅から隅まで調べても、空色ピクニックシートは見つからなかった。

「……まさか先生、騙したんじゃ」

 いや、吉本新喜劇を見て「わっはっは」と大笑いしていそうな先生が生徒を騙すとは思えない。担がれたわけではないと思う。

 しかし、だ。怒るべきは先生ではなく、二年生の誰かさんだ。

 入学式の日に後輩を先生まで使って呼び出しておいて、いざ出向いてみたらいないとは何たる話だ。ここまでやってきただけでも褒められるべき出来事である。

「……帰ろう」

 私は神崎探偵事務所に帰宅するという決断を下した。

 一階の教室に戻り、カバンを肩にかけサイドバッグを持つ。私以外には誰もいなかった。

 すると。

『ピーンポーンパーンポーン』

 校内放送の合図がスピーカーから流れてきて、私は思わず耳を澄ませる。

『生徒の呼び出しを致します。一年四組、皆本遥香さん。一年四組、皆本遥香さん。一号館の屋上まで来てください。ポーンパーンポーンピーン』

「……………………」

 まったく、本当によく呼び出される一日だ。

 別に行ってやる義理はないのだが、春岡綾音以外の生徒とも非友好的な関係を結ぶのはごめんである。私は大袈裟に嘆息し、カバンとサイドバッグを持って屋上へ。

 通常、学校の屋上という代物は、マンガのキャラクターでない限り夢のまた夢である。多くの学校は飛び降り自殺防止のため、屋上は開放されていないからだ。

 しかし、花咲高校の屋上はなぜか出入り自由である。間隔が狭く、高い柵を飛び越えてまで自殺する物好きはいないだろう、というのが学校側の言い分らしい。天文部の天体観測もここでおこなわれるとか。

 それはそうとして、屋上にたどり着くと、五人がけのベンチが数個置かれていた。そのうちの一脚に、黒髪ストレートの女子生徒と、ツンツン頭の男子生徒が腰かけていた。

 誰もいない屋上。少し離れて座る男女。春の日。聞こえるのはスズメのさえずりと、運動部の爽やかな音頭。

 逢引中でしたか、こりゃまた失礼……

 勝手にシチュエーションを置き換え、退散しようとしたところ、男子がこちらを振り向いた。その顔には見覚えがある。

 実際、相手も覚えていたらしい。

「やあ、ようやく来てくれたね! さあ、おいでおいで、遥香」

 長谷川恭介さんは、まるで十年来の親友を呼ぶような気さくさで私を手招きする。その隣に座る女性は、クールなのかコミュニケーションが苦手なのか、ずっと前を向いたままだ。その視線の先には何があるのだろう。

 しかし、相手はそんな、センチメンタルな気分に浸るような人間ではないことを、私は五秒後に思い知った。

 ベンチの脚にカバンとサイドバッグを立てかける私。建て付けが悪いのか、軽くベンチが揺れる。

 その揺れに、女性はハッと目を見開いた。そして、あたりをキョロキョロする。

「ここ、どこ……?」

「屋上だよ」恭介さんが目で笑う。「遥香が来たよ」

「はるか……ああ、遥香ね! うん、あたしは別に、眠ってなんかいなかったわよー」

 嘘こけ! と叫びたかったが、私がぐっと堪える。少しでもクール美女の可能性を信じた私がバカだった!

 しかし、ヘラヘラ笑う彼女が美しいことは、紛れもない事実だった。黒髪ストレートは春岡綾音とどっこいどっこい。その顔の端正さも、彼女と同類だ。ちなみに私の推測であるが、その性格の面倒臭さも彼女と目くそ鼻くそだと思う。

 ただ春岡綾音と決定的に違っているのは、その目を奪われるほどのスタイルの良さだ。古い言葉を使うと、ボン・キュッ・ボン。重そうなバストと締まったウエストと、形の良さが座ったままでもわかるヒップ。モデル体型とはこのことか。

 モデル体型の美女は「二年三組、栗山美鈴」と名乗った。そういえば恭介さんのメールアドレスのアカウント名は『marronbell』だったな、と思い出す。駅前交番の水戸さんも「栗山」という名字を口にしていた。

 謎だったことが、全て腑に落ちた瞬間だった。

 だが、感慨に浸っている場合ではない。私はいきなり、恭介さんに目を剥いた。

「んで、長谷川恭介さん。グラウンドから屋上へ、私をたらい回しにしてどうする気ですか?」

「いや、それがね……」恭介さんは悪びれず、頭をかきむしる。「今日、花粉が多いだろ? 美鈴は花粉症でね。花壇のないところを探したら、ここが見つかったってわけさ」

「それなら、最初っから屋上にすればよかったじゃないですか!」

「いや、美鈴の言葉に従ったから……美鈴が最初はグラウンドがいいって言って、それから『花壇のチューリップがダメだから屋上がいい』って言ったから……」

 ダメなのはアンタの方だ! 彼が栗山さんに惚れていることは重々承知だったが、ここまで来たら甘やかしすぎだ。たぶんこの人は『美鈴のためなら、たとえ火の中水の中』なんだろう。

 確かに栗山美鈴という女性、それだけしてやりたいほどの美しさがある。しかし、先生はこの二人を『要注意人物』と評していた。アイデンティティ確立しまくりの二人組だが、そう悪い人には思えない。なら、なんで『要注意人物』?

 頭を回転させる私を置いて、二人は話に花を咲かせる。思考に行き詰まった私は、耳を傾けた。

「にしても、さっきのはやりすぎだったかな。放送部の人たち、怒ってたよ」

「まあ、いいじゃないの。前々からやってたんだし」

「美鈴はいつも突拍子もないもんなぁ。放送室を無断拝借して、僕に遥香を呼び出させたり。去年の二学期なんか、男子バスケ部の練習に入り込んだし」

「だって、彼らウィンターカップも近いってのに、オールレンジシュートの練習ばっかりしてるんだもん。あんなんじゃいつまでたっても弱小バスケ部よ!」

「まあ、あの一件をきっかけに、バスケ部はめきめき上達してきたけどね」

「ホントホント。先週末の上尾坂学園との練習試合はどうだったのかしら?」

「今までの弱小っぷりとは比べ物にならないほどだったらしいよ」

「今年のインターハイが楽しみだわ」

「でも、百点差だったのが九十点差に縮まっただけらしいけどね……」

「……今週も焼きを入れてやらなくちゃ!」

 ……いろいろ、わかった気がする。

 栗山さんが拳を空に突き上げる様子を眺めてから、私は口を挟んだ。

「…………で、放送室をジャックしたりバスケ部の邪魔をしたりするあなたたちが、私に何の用なんですか」

「人聞き悪いわねえ。あたしはバスケ部のためを思って……」

 憮然とする栗山さんを恭介さんがなだめて、私の質問に答える。

「今日、キミを呼び出したのは他でもない。ぜひ、我がサブメンに入部してもらいたいと思って……」

「お断りします!」

 即効で辞退させていただく。

 二人の先輩はギャグマンガか吉本新喜劇でしか見られないズッコケをおこない、それからきっかり三秒後に起き上がった。栗山さんはスカートのほこりを払いながら、

「どうしても?」と、麗しい瞳を向ける。

「どうしてもです」私はそれに胸を躍らせながらも、心を鬼にする。

 がっかりする栗山さん。彼女の背中をさする恭介さんを見ながら、私は肝心なこと思い出した。

 そういえば私は、この二人の人となりだけでサブメン入部を辞退したが、そのサブメンとはなんなのかをまったく知らない。知らずにやめるとは無責任な話だ。ここはクラブの実態を聞いておくことが先決かもしれない。

 絶望した表情の二人に、私は可愛い後輩の笑顔で尋ねる。

「あの、そもそも、サブメンってなんですか?」

「ああ、遥香ちゃん!」「おお、遥香!」

 二人はオーバーリアクションで喜びを表現した。

「それを聞くということは、サブメンに興味があるんだね?」

「は、いや、そういうわけでは……」

「ご説明致しましょう!」

 後輩の話など意に介さず、恭介さんが長広舌を振るう。

「『明鏡国語辞典』によると、“支所”とは“会社・役所などで、本社・本庁から離れたところに設ける事務所”という意味だ。つまり我らがサブメンは、とある事務所の支所、つまりサブとして活躍しているのだ。どんな事務所のサブかは後で説明するが……。もっと聞きたいかね!?」

「ああ、そうですね……」私はばかみたいに首をコクコク縦に振る。

「しかし、なぜだか最近、本所に仕事が舞い込んでこないという致命的な欠点が浮上している。そこで我々はいつかやってくる仕事のため、日々英気を養っているのだ。この世に生きとし生けるものにはすべて、さまざまなシチュエーションで多数のストレスが溜まる。我々サブメンは、勉学や仕事などのストレスから解放され、いつかやってくる仕事に万全の体勢で挑むため、日夜努力しているのだ。そうでなくとも、英気を養うことは現代人にとって重要なファクターでもある。それをおおっぴらにおこない、なおかつ人の役に立つ。そんな慈善事業団体、それがサブメンだ。どうだ、興味ないかね!?」

 確かに、心身の活力を養うことは現代人にはとっても大切なファクターである。しかし、

「で、仕事以外では具体的にどういう活動を?」

「そうだな……。カラオケに行ったり、ゲームセンターに行ったり、映画館に行ったり、ピクニックに行ったり、走ったり踊ったり……」

「バスケしたりジャックしたり?」

「そうそう……いや、そうではなーい!」

 ノリツッコミがうまい。が、そういうことではない。

「要するにあなたたち、ストレス発散にかこつけて、遊びに行きたいだけでは?」

「無論、そうよ!」栗山さんが後ろで胸を張る。

「で、ストレス発散にかこつけて、校内で好きなことやらかしているだけでは?」

「そんなことはない!」栗山さんがまた胸を張る。自覚はないようだ。

「この際聞いときますが、他に部員は?」

「あたしと恭介と、あと一人。彼は今はいないわ!」イナバウアーのような胸の張り方。大きな胸が空を向いている。

 サブメン――恭介さんの話を聞く限り、どしどし部員が集まってもおかしくなさそうだが、人数が少ない原因はこれか。二人共キャラが爆発している。

「……じゃあ、もう一度聞こう。入部するかい?」

「しません!」

 またもや即答。しかし恭介さんはなおも食い下がる。

「どうしてだ? なぜサブメンじゃいけないんだ?」

「いや、なんでと言われましてもね。えーっと、あっと、私、文芸部に入るつもりでして」

「なに、文芸部!?」恭介さんの眉がピクリと動く。「確かにうちに文芸部はあるが……。でも、なぜだ? なぜ文芸部に入るから、サブメンには入れないんだ?」

「そりゃ、兼部なんて私には出来ませんし……」

 神崎探偵事務所専属メイドの仕事が忙しいことは伏せておく。

「それに、私は小説執筆が趣味でして、だから、文芸部で執筆に力を入れたいと……」

「なーんだ、そんなことか」

 恭介さんが拍子抜けたようにあっけらかんと言う。栗山さんなんか、拍子抜けすぎてナメクジみたいにふにゃふにゃになってベンチで寝転がっている。

「だったら大丈夫。サブメンにいながら小説を書けばいいじゃないか」

「いや、だからですね、そういうことじゃなくてですね、そもそも花咲高校では兼部が禁止されていたような……」

「……………………」

 恭介さんが振り向き、ベンチで復活した栗山さんと顔を見合わせる。数秒の間が開き、恭介さんが衝撃的な一言を放つ。

「サブメンは部活じゃないよ?」

「は!?」

「文芸部は学校に認められ、予算も部室ももらえる公認クラブ。我々は予算も部室もない非公認クラブ」

「…………」

「サブメンで活動しても、なんの文句も言われない!」

 絶句するしかないが、確かにまあ、こんなアヤシイ団体を公認にするわけないか。

「オープンスクールでは説明されなかっただろうけどね、花咲高校にはうちを入れて四つの非公認クラブがあるんだ。ラ部、ホーキベースボールクラブ、コスプレクラブ、そして華のサブメン!」

「ホーキベースボールクラブ……」

 そういえば四月一日、花咲高校を見学していると、ほうきとテニスボールを持った生徒たちがグラウンドに向かうところを目撃した。あれがホーキベースボールクラブか。ほうきを野球バット、テニスボールを野球ボールに見立てて野球をおこなうのだろう。テニスボールがそんなに飛ぶのかはさておき。

「ちなみにホーキベースボールクラブ、通称HBCのピッチャーは、テニスラケットでボールを投げるのだそうだ。そしてバッターは、バットとラケット、好きな方で打つ。どっちを使ってもいいけど、ラケットの方が圧倒的に人気があるみたいだね」

 ……わかんない人たちだ。

「で、ラ部というのは?」

「恋のキューピッドをおこなうクラブ。バレンタインは彼らのステージだよ」

「ほう……」まともかもしれない。

「ただし、すでに成立しているカップルのどちらかが好きという相談を持ちかけられても応援し、横取りしてしまうこともままあるので注意!」

「…………」わかんない人たちだ。

「コスプレクラブってのは読んで字の如くですね」

「だろう? コミケの時期には東京に出向き、文化祭ではコスプレ喫茶を開き、演劇部や他校でコスチュームが必要なときには貸す」

「ほう……」ひょっとして、また裏があるんじゃないだろうか?

「我が花咲高校の非公認クラブの中では、もっとも学校に優遇されているクラブだね」

「……私、どうせ非公認クラブに入るなら、そこがいいです」

「え~」二人して頭からスッポ抜けたような声を出す。

「そんな声が出るなら、サブメンは解散して、合唱部に入ったほうがいいですよ。本所の人には迷惑かかるかもしれませんけど」

「ねえ、最後に一度だけ勧誘させてくれよ!」

 聞いちゃいない。恭介さん+栗山さんも加わって、二人がかりで勧誘活動。

「キミ、小説を書くのが趣味なんだよね?」

「そうですけど」

「だったら、あたしたちサブメンを題材にして小説を書けばいいじゃない」

 え?

「僕らは大歓迎だよ!」

「それに、サブメンはいろんなところに出かけるから、さまざまな体験が出来るわよ~」

「小説家には、取材が付き物だよね?」

「めったにできない体験も一生分できるわよ」

「……」心が揺らぐ。

「そんなことめったにあるもんじゃないよ」

「さあさあさあ!」「さあさあさあ!」

 目を爛々とさせて迫ってくる先輩二人。

 結局私は、題材と、取材と、キャラ爆発な二人の先輩に根負けした。


「はーい、一丁上がりー」

 栗山さんがカバンから出したファイルに挟まっていたレポート用紙を切り取り作った、簡易入部届に名前とクラスと住所と連絡先を記入する。それに目を走らせた二人は、あっと驚きの声をあげた。

「ん? どうしたんですか?」

「いや、どうもしないけど……。『古井荘 神崎探偵事務所』って、あの神崎さんの関係者!?」

 再び迫ってくる先輩たち。私は彼らの顔を押し戻しながら暴露する。

「た、確かに私は神崎探偵事務所で助手をやってます! あまり知られたくないけど!」

「うーん、これは驚いたわね」「偶然だな」

 うなる二人。私は二人に尋ねる。

「あの、神崎さんがどうしたんですか? 偶然って何のことです?」

「実はね……」恭介さんは、驚きに値する事実を語った。

「神崎さんは、我らがサブメンの仲間なんだよね」

「……………………」

 いくら非公認だからって、学校外の人間を入れるだろうか。

「ちなみに、すっかり忘れてたけど、サブメンは『神崎探偵事務所花咲高校支所』の略称。神崎さんもサブメンの一員だということは、当然の結果だよね」

 そんなこと、今までいっぺんも教えてもらってないぞ!

「そういう大事なことは、最初に言ってくださいよ! それなら私も入らなかったのに!」

 恭介さんに膝蹴りを食らわせようとするが、避けられた。

「だって、言ったら絶対入ってくれないと思ったし」

「詐欺じゃないですか!」

「でも、どちらにしろ、キミが神崎探偵事務所に所属しているなら、いずれは僕らと関わることになるんだ。それが数日分伸びただけ。わかるだろう?」

 そう言われると反論の余地がない。

 結局私は、計算高い先輩たちの前で沈黙するしかなかった。

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